夕霧千尋の人生日記

大学生→社会人が小説・ゲームその他など自分の好きなことを書き綴ります

グアムの探偵 「アガニアショッピングセンター」

みなさん。こんにちは。夕霧千尋です。さて今回はグアムの探偵のお話の一つを紹介します。日本でもよく起こるある問題が今回の事件の引き金となりました。

 

「アガニアショッピングセンター」


1巻の5話に掲載されている。アガニアショッピングセンターとはグアムにあるショッピングセンターである。

 

 

 

 


「忘れもしない二年生のある日、デニスが言った。よく話してくれた。打ち明けられたことが勇気だ。」

 

 

 

 

以下、ネタバレ注意


<あらすじ>
イーストマウンテンリサーチ社にある夫婦が訪れた。息子が誘拐されたという。昨日、アガニアショッピングセンターに行ったときに息子を見失い、次の日に郵便受けに脅迫状が投げ込まれていたという。誘拐犯を恐れ、警察に通報せず、探偵を頼ったとのことだが、本来にならば誘拐の事実を把握した時点で警察に通報しなければならない。加えて、誘拐犯の手紙が来た時点で、夫婦は大騒ぎしてしまったため隣の家に事情を知られてしまった。しかも、息子がいなくなったことをツイッターに乗せて情報提供を呼びかけたため、失踪の事実が広く知られてしまい、脅迫状はいたずらの可能性も出てきた。イーストマウンテンリサーチ社は事件解決のため、誘拐された息子の同級生を当たることから始める。誘拐した犯人は誰なのか、脅迫状は本物なのか?

 


<登場人物>
・レイ・ヒガシヤマ
イーストマウンテンリサーチ社の三代目。徳永夫妻の行動にはあきれた様子を見せていた。主に徳永夫妻から話を聞きだしている。クレイニーに探偵になった理由を訊かれたときは、祖父や父に職業の意義を繰り返し説かれたことと日本の学校は髪形やつめの長さに制限があることが原因でアメリカの探偵になったと語っている。今回の事件の解決にはレイのある思い出が関係しているようだが・・・?


・デニス・ヒガシヤマ
イーストマウンテンリサーチ社の副所長。ショッピングセンターのカメラの映像を確認している。今回の事件でデニスが警察を懲戒解雇になった理由が明かされる。


・ゲンゾー・ヒガシヤマ
イーストマウンテンリサーチ社の所長。今回は息子と孫以外のメンバーにも指示を出し、徹底的に探させている。一度目の調査で息子が見つからなかったときは親を全て理解しないと子供のことはわからないとして各家庭の収入や借金額まで調査させた。息子をかくまっている同級生の保護者から賄賂を受け取ってはいないかと発言した際は周囲から一斉にブーイングを浴びた。


・アンセルム・クレイニー
イーストマウンテンリサーチ社の所員。ブロンドの髪に色白の小顔を持つ25歳。その髪と肌の色が原因で群衆に溶け込めないため、尾行や張り込みを苦手としているが、ゲンゾーによると奥様方から話を聴きだすことに長けているらしい。レイに日本とグアムに違いは何かと訊き、日本では下着ドロが出ると言われたときに犯人は下着を買えない女性だろうと返し、犯人が変態男と聴いたときは驚いていた。彼は今後の話にもたびたび登場する。


・カラム・キャンベル
イーストマウンテンリサーチ社のベテラン所員。頭髪は薄めだが、知性派。昴の同級生を当たっており、ショッピングセンターの警備室からも話を聴いている。


・ヨアン・アボット
イーストマウンテンリサーチ社の所員。猪首で力自慢。昴の同級生を当たっている。


・徳永晃司、徳永佐有里
事務所にやってきた夫妻。脅迫状におびえて警察に通報しないくせに大声で騒いで近所に誘拐の事実を知られたり、失踪をツイッターで呼び掛けるなどひどく迂闊な面がある。(以前も一度見失った時があり、その際もツイッターで呼び掛けたことで見つけることができたらしい。)息子の昴が消えたとき、晃司は仕事中で、佐有里が一緒にショッピングセンターに来ていたが、警備室に声をかけた後に家に一人で帰宅しており、レイには子どもを一人で留守番させる日本の感覚が抜けていないと呆れられた。しかし、昴を心配する気持ちは本物でレイが自宅を訪れた際に佐有里は終始落ち着かない様子を見せており、しばらくすると泣き出した。


・徳永昴
徳永夫妻の息子で失踪した。ショッピングセンターに記録された映像によると丸メガネの男についていったらしいが、ショッピングセンターから出ているシャトルバス内の映像には残っていない。幼少期から英語教室に通っており、英語は堪能。そのため、英語が喋れないクラスでなく、普通学級に所属していた。学校には喜んで通っており、友達も多く、教科の成績も常に平均以上だという。また、休みの間に様々なイベントで集まることを楽しみにしている。自室はきれいに整理整頓されており、チリ一つなかった。冬休みの宿題として通っているマニンガム・ブラー小学校から多くの課題を出されており、それとは別にオンラインの宿題も出されているが紙の宿題の方はなぜか二組あった。学校によると失踪するまでの間オンラインの宿題は毎日欠かさず、自宅から提出しており、規則正しい生活を送っていることが分かる。スマホを持っているが、メールとSMSに使用の形跡なし。プリントの下の机の表層にsotexxという落書きをしている。


・ジェフ
徳永一家の隣に住んでいる。夫妻が大声で誘拐の話をしていた上に晃司がうっかり口を滑らせたため、誘拐の詳細を知ることになる。晃司からは口止めされていたが、警察に事実を話した。


・バージェス
以前も出てきた警部。ツイッターを見た市民から連絡を受け、徳永夫妻の下にやってきた。夫妻の対応には終始呆れていた。誘拐ではなく、迷子からの行方不明と言うかたちで捜査を進めようとしている。イーストマウンテンリサーチ社から捜査協力を申し出られた時は渋い顔をしたものの、警察の捜査が優先すると述べたうえで、協力を受け入れた。後に公開捜査に方針を切り替え、地元紙などで失踪を報じさせた。


・丸眼鏡の男
ショッピングセンターの映像に昴と並んで歩く姿が見られた50歳前後の男性。フルーツの販売店前で店員に差し出されたパパイヤの切り身を食し、それを昴にも分けた。その後、アガニアショッピングセンターから遠く離れたタモン中心街でも昴と一緒に並んで歩く姿が目撃された。誘拐をしているようには見えず、親しげな様子だった。


・チェルノ・カルダーウッド
昴の同級生。教師によると体が大きく、威張りたがりらしい。昴とはあまり関りを持っていない。


・ブルガッジィ・カルダーウッド
チェルノの父。不動産投資で財を成し、公立学校に子を通わせる親としては巨額の財を成していたが、やがて投資額を回収できなくなり、不渡りの小切手を出したことで銀行取引停止の憂き目にあった。裏社会の連中から金を借りており、破産同然の状態らしい。現在はバリガダの造船会社の役員になっており、給料で借金の利息分を何とか賄うつもりらしい。


・シャーキー
裏社会の高利貸し兼ヤクの売人。用心棒のベドソンを連れている。ブルガッジィに80万ドルを貸しており、ブルガッジィが多重債務者であることを見抜いている。返済不可能な額の借金を負わせ、利息を永遠に払わせる様はデニスにゴミにふさわしい生業と言われた。


・サトシ・イシダ、トミコ・ワタナベ
昴と同じクラスにいる二人の日本人。二人とも昴とは仲良くやっているらしい。


以下、更なるネタバレ注意

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「世間のクズども二十人。昴君は同級生をそう見なしてたことになります」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


・徳永昴
彼は誘拐されたのではなく、家出していた。脅迫状を家のポストに入れたのも彼本人。両親は気付いていなかったが、彼はクラスメイト、特にチェルノにいじめられていた。メールやSMSは使っていなかったが、クラス専用のSNSがあり、彼らはそこでやり取りをしていた。しかし、昴が会話に参加しても誰一人挨拶はせず、チェルノだけは話しかけていたが、その内容も宿題をやっておけとかテスト中に答えのメモを回せなどの命令をしていた。机にあったsotexxはSNSのパスワードでscum of the earth XXの意味。XXはローマ数字で二十。scum of the earthは世間のクズどもという意味。つまりこれは世間のクズども20人を意味する(昴の20人のクラスメイトのこと)。休みの間もチェルノは自分の宿題を昴に押し付け、オンラインの宿題は昴を家に呼んでやらせていた。昴はイベントに参加すると言って家を出て、他の大人にくっついてバスを乗り継ぎ、チェルノの家に行っていた。(グアムでは子どもが一人で外出するのは異常事態のため、大人にくっつく必要があった。)しかし、冬休みのある日、チェルノの一家はとある事情から家を留守にした。そのことを知った昴はチェルノの家に籠城し、冷蔵庫の食料を食べて凌いでいた。家出をした理由は自宅とチェルノの家を往復することが面倒になったこともあるだろうが、それ以上に自分がいじめられていることに気付かないわからず屋の両親に反発を強めたから。チェルノの家にいたところレイ達に発見され、保護された。グアムの法律では家出した子供が保護者のもとに帰す前に子ども自身の意志を確かめなくてはいけないが、昴は親の元に帰る意思を示したため、無事、両親の元に戻された


・徳永晃司・徳永佐有里
昴がいじめられていたという事実を全く知らず、そのことや昴がクラスメイトをクズどもと呼んでいたことを知らされた時は愕然とした。レイからは認識不足で昴を見放しているも同然と言われ、ショックを受けたが、自分たちが息子の都合を考えていなかったことや悩みを聴こうとしていなかったことを自覚し、態度を改めることを決意。昴と共に再び暮らすことになった。虐待と言うほどではないが、子どもが悩んでいることに気付かなかったのは親として、多少問題だろう。


・チェルノ・カルダーウッド
昴に命令して自身の宿題をやらせていた。冬休み中は両親と海外旅行に行った(とチェルノは思って)おり、その間に昴はチェルノの自宅に住み着いた。体が大きく、家は金持ちという条件があったが、いくら子どもとはいえ、いじめは許されることではない。彼は今後しっかり反省する必要があるだろう。


・ブルガッジィ・カルダーウッド
投資に失敗して破産していたが、その事実を息子には伏せていた。闇金の借金も返済できそうになかったため、息子に海外旅行と嘘をついて夜逃げした。逃げ出したことがバレないよう、インターホンはスマホに接続させ、人影が映った動画をカーテンに投影して、夜間には家族がいるかのごとく演出した。造船会社の役員も名簿登録しただけで、出勤はしておらず、自分の車も知り合いに朝から晩まで運転させ、仕事に出かけているよう装った。小細工したインターホンから転送先を探った結果、今はメキシコにいることが発覚。今後、借金がどうなるのかはわからない。投資で失敗したのは悲運だったが、そもそも投資はそのリスクを承知の上でやるものであり、チェルノに破産の事実を伏せていた上に自分の子どもがいじめを行っていることを知らないなどこっちの親は徳永夫妻以上に問題があると言える。(子供のいじめは大人にバレないよう巧妙に行われるのである程度は仕方ないが、親なら子供に規範意識と言うものを身につけさせてほしい。だいたい、休みの間、ずっと昴はチェルノの家に遊びに来ていたのになぜ気付かなかったのか)


・サトシ・イシダ、トミコ・ワタナベ(とその他のクラスメイト)
全員そろって、チェルノのいじめを黙認していた。チェルノが怖かったのかもしれないが、先生や親に報告ぐらいしてもよかったのではないか。


・丸眼鏡の男
スイスからの旅行者で昴とは何の関係もない。昴の方から彼についていくことで同伴者を装った。彼はグアムの習慣を知らなかったので子供が一人で出歩くことを不審に思わなかった。しかし、昴がその後もショッピングセンターや遊園地まで付いてきたのでさすがに不審に思い、問いただしたところ、昴は一人で立ち去った。


・バージェス
最初は探偵社を疎ましがっていたが、子どもを実際に救ったことには素直に感謝し、警察上層部に対し、レイたちが事後報告でチェルノの家に勝手に踏み込んだことを弁護した。


・アンセルム・クレイニー
バンプキーとハンマーでチェルノの家の鍵を破壊し、隠れている昴を見つけ出した。自身も幼い頃、いじめられた経験があるらしく、昴の立場を理解し、昴が親の下に帰るまでの間、一緒に遊んでいた。


・カラム・キャンベル
チェルノと昴のかかわりがなかったというクラスメイトの意見を安易に信用して、調査を怠ったことをゲンゾーに叱責された。チェルノの家に踏み込む際は機敏な動きでフェンスを乗り越え、門の閂を外した。


・ヨハン・アボット
インターホン越しにチェルノの親と会話しただけにも関わらず、そのことを報告書に記載しなかった点をゲンゾーに叱責された。チェルノの家に踏み込む際はロッキングプライヤーでドアのチェーンを切断した。


・ゲンゾー・ヒガシヤマ
キャンベル達が失態したことを厳しく非難していた。チェルノの家に踏み込む際は全体を指揮し、突入の号令をかけた。


・デニス・ヒガシヤマ
車で各家庭を巡回したと言っていたが、実際は窓から家の様子を眺めただけだった。ゲンゾーからインターホンをおせば応対しながら、立ち働く奇妙な主婦に気付いたはずと叱責され、自身の失態を認めた。
実はレイも日本人の血が混じっていたため、幼い頃は学校でいじめにあっていた。レイからそのことを告白されたデニスはレイを守ると決意した。デニスもアジア人とのハーフのため、コミュニティから疎外されがちだったが、断固として譲らず、首謀者親子の下に直談判しに行った。最終的にはつかみあいの喧嘩となったため、警察を懲戒免職になり、探偵に転職した。


・レイ・ヒガシヤマ
幼い頃、いじめを受けていたが、デニスが直談判したおかげで救われた。デニスが警察を免職になったことを不祥事とは全く考えておらず、探偵になったことも地位の低下ではないと証明したかったために彼は最初から探偵を志したという。普段、罵り合っている親子の間にもこのような強い絆があった。

 

それでは皆さん。ごきげんよう