夕霧千尋の人生日記

大学生→社会人が小説・ゲームその他など自分の好きなことを書き綴ります

グアムの探偵 「天国へ向かう船」

みなさん、こんにちは。夕霧千尋です。今回はグアムの探偵の話の一つ「天国へ向かう船」を紹介します。グアムの探偵史上トップクラスに不可解な状況だと思われるので是非楽しんで読んでください。

 

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「天国へ向かう船」


この話は2巻の3話として掲載されている。
「クルーザーが宙に浮かんでいる。高さは三百フィートぐらいか。」

 

<あらすじ>
イーストマウンテンリサーチ社にアデリン・マコーリーという女性からとあるコンドミニアムに来てほしいと連絡が入った。レイが指定された部屋に行いったが、誰もいなかったので暇つぶしにテーブルの上に置いてあった雑誌を手に取っているといつの間にか睡魔に襲われ眠ってしまった。目が覚めると船と思わしき空間の中にいた。拳銃や腕時計、財布やスマホも奪われていたが携帯GPSは無事だった。それを起動してみるとなんとここは船の中だが船がいるのは海上ではなく、山中であることがわかった。船内を歩き回っていると自分と同じく突然捕らわれた4人の男女に出会った。ここは一体どこなのか、なぜ自分たちが連れてこられたのかそんなことを話し合っているとスピーカーのノイズが聞こえてきた。その音を頼りに探してみると備え付けの棚の中にトランシーバーが入っていた。応答していると相手の男はダリオといい、山中でトランシーバーを拾ったのだという。さらにレイがトランシーバーの近くにあったポータブル小型液晶テレビを起動させると雑草の茂る地面が映った。どうやらダリオの近くにビデオカメラが落ちておりその映像を受信しているようだった。レイはダリオに頼み、近くにある船を映して貰った。途端に船中の5人は驚愕した。クルーザーが船主と船尾に連結された2本のワイヤーのみを頼りに地上300フィートに浮いていたのだ。

 

<登場人物>
・レイ・ヒガシヤマ
イーストマウンテンリサーチ社の三代目。コンドミニアムに呼び出されたと思ったらいつの間にか眠らされ船の中に入れられていた。彼が普段から持っている携帯GPSが誘拐犯に気付かれなかったため、現在地を特定することができた。後に大型クレーン車で船を吊り上げるかかどうかの是非を問われたときは自分たちがどちらの結論を出しても要請は通らないとして態度を保留した。

 

エスモンド・オレアリー
夏物のスーツを着た白髪頭に丸顔の男。牧師のような面持ち。タイ在住のアメリカ人で妻と共に22年間雑貨屋を営んだ。タモンビーチで寝そべっている際に拉致された。後に5人救出の際に大型クレーン車で船を吊り上げると聴いたときは真っ先にパラモール社の事故を思い出し、救助方法に断固として反対した。

 

・モニカ・カスティー
フィリピン系の女性でサイクルジャージに短いスカートを履いている。20歳。高校を出てからグアムに移住し、ハンバーガーショップで働いている。中華公園の近くをサイクリングしていたら急に意識が遠のき誘拐されたようだが、体に怪我はない。大型クレーン車を使う救出方法を最初に提案した。パラモール社の事故を聴いてもすでに改良されている可能性が高いとして大型クレーン車で船を吊り上げる策に賛成し続けた。

 

・パスム・コーエン
チャモロ人。開襟シャツにスラックス、革靴を履いている。37歳で英字地方紙グアムデイリーニュースの記者をしている。妻と二人の息子がおり、アガニアハイツに住んでいる。匿名で重要な政治ネタがあると言われ、レイと同じコンドミニアムにアデリン・マコーリーに呼び出されたが、そこで眠らされ拉致された。パラモール社の事故が起きた頃はまだ新人記者であり、その事故について取材していたため事故の詳細を覚えている。そのため、大型クレーン車で船を吊り上げる策には反対した。

 

・クライド・リッジウェイ
ブロンドの髪を持つ22歳。15歳から父の転勤によってグアムで暮らしている。ダムニング小学校のそばに住んでおり、家で寝ていたらいつの間にか攫われていたという何とも間抜けな男。普段着で就寝しており、仕事はウェスティンホテルの受付兼施設管理。

 

・アデリン・マコーリー
レイとコーエンを呼び出した謎の女性。彼らに電話をかけ、コンドミニアムの一室に案内したのちにハロタンで眠らせて彼らを船の中に拉致した。おそらく他の三人に対しても何らかの方法で眠らせたと考えられる。コーエンによるとモニカと声が似ているように感じられるらしい。

 

・ダリオ
山岳警備隊でレイ達の乗った空に浮かぶ船を最初に発見した。山中に落ちていたトランシーバーで連絡を取り、ビデオカメラを船に向けて、彼らに状況を教えた。最初に空に浮かぶ船を見たときは腰を抜かすほど驚いただろう。

 

・デニス・ヒガシヤマ、ゲンゾー・ヒガシヤマ
レイが突然行方不明になり、警察から連絡を受けて船が浮かんでいる現場にデニスのジープで来た。トランシーバーでレイと連絡を取り、船の状況や十年前に起きたパラモール社の事故の詳細を伝えた。二人ともどうやってあの巨大なクルーザーを300フィートもの高さに上げたのかわからず、頭を悩ませていた。船中にいるレイに対してはポジティブシンキングでいろと結構な無茶を言っていた。

 

・メイブリック
グアム警察の警部でデニスの知り合い。今回の事件解決の指揮をとっている。鋭い目つきに鷲鼻。ローカルテレビのリポーターに中継を止めさせ、トランシーバーをデニスに渡した。クルーザーから5人を救出するための様々な方法をデニスやゲンゾーと話し合った。

 

<クルーザーの状況>
レイたち5人が閉じ込められているクルーザーは300フィート(約100m)の高さに2本のワイヤーのみを支えにつるされている。2本のワイヤーはそれぞれ30トンの重さに耐えられる鋼鉄製だが、クルーザーの重さは60トンを超えるらしく、徐々にワイヤーはきしみ始めている。船内の水栓やトイレは機能する。窓は全てふさがれており、操舵室へとつながる階段は撤去された上に扉は溶接されている。食料はないが小さな冷蔵庫にミネラルウォーターが10本入っており、1人2本飲める。船の原動力となるエンジンやシャフトは外されており発電用エンジンによって非常灯のみが点灯している。船に空いている小さな穴から光が差し込んでいるため日向にいることがわかるが、船は空に浮いており地熱の影響を受けないため、割と涼しい。ついでに状況を知ったあとは恐怖で余計涼しくなる。

 

<パラモール社の事故>
5人のいるクルーザーをつり下ろすためにモニカの提案で超大型クレーン車を使おうとしたが、この高さにまで届くクレーン車はグアムに1台だけであったため使うことになったのがパラモール社の超大型クレーン。デニスはこのクレーン車を使ってクルーザーを吊り上げたのではないかと予測したが、ゲンゾーは所有者であってもこっそり持ち出せるものではないと否定した。クレーン車の先端にゴンドラをとりつけ作業員によって船の壁を外し、一人ずつ救出する方法も考えられたが、ワイヤーがきしみ始めており一人づつゴンドラに乗せることは船が絶えず揺れていることもあって困難を伴う。やはりクルーザーごとクレーンで持ち上げ、船首と船尾のワイヤーを切断することが最善の策と言う話になった。しかし、この方法には大きな問題がある。それは使われるパラモール社のクレーンが過去に大きな事故を起こしたことだ。10年前シンガポールで大手建設会社モーヴィスグループが高層ビルを建築しておりそのために超巨大クレーン車「パラモールGTW11000MX」が導入された。1000トンもの重量物を350フィートの高さに運べることもあり工期の大幅短縮が期待されていた。ところが100トンの鋼材をつるしていただけなのにアームを伸ばしきった直後クレーンは横倒しになり26棟の民家に加え、学校と病院の一部を損壊する大事故になった。死者186名、負傷者327名。遺族と建設会社モーヴィスはクレーン車の構造的欠陥が事故の原因としてクレーンの製造元であるパラモール社を起訴。パラモール社はモーヴィス社の地盤調査と現地でのクレーン車の操作ミスが事故の原因とした。互いに一歩も譲らず裁判は長期化。マスコミもパラモール社への糾弾を強めたが結局最高裁でパラモール社は罪を問われず、無罪放免。裁判所とパラモール社の癒着を疑う声まで上がったが、パラモール社社長のドゥーガルド・パラモールはGTW11000MXの性能が公に認められたものとして改良をせずに、今日まで製造と販売を続けた。つまり今回のクルーザー吊り上げに使われるのは10年前の事故から何の改良もされていないクレーン車である。

 

・ドゥーガルド・パラモール
事故を起こしたクレーン車を製造しているパラモール社の社長。事故の責任を問われたが、結局無罪放免となり、クレーン車の改良をしていない。

 

・アリ・モーヴィス、アイシャ・モーヴィス
建設会社モーヴィスの社長のアリとその娘のアイシャ共にパラモール社の車両に欠陥があるとしてパラモール社を起訴した。特にアイシャは建設用特殊車両安全保安協会会長であり、起訴の中心になっている。

 

・デューク・アルドヘルム
丸眼鏡に厳格な顔つきが特徴の工学博士。両親と妹を事故で亡くしている。事故の原因究明のため工学博士になった。パラモール社の車両の欠陥は数学的に証明できるが裁判所はそれを怠ったとして裁判所とパラモール社を厳しく非難している。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「欠陥は把握済みだ!私がいってるんだぞ。事故が起きたらきみのせいだからな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・アイシャ・モーヴィス、デューク・アルドヘルム
10年前パラモール社の車両の欠陥の犠牲者となった二人。アイシャはモニカとして、アルドヘルムはリッジウェイとしてこの船に拉致されたフリをしていた。目的はパラモール社社長のドゥーガルドにクレーン車の欠陥を認めさせ、裁判の判決を覆させること。そのためにドゥーガルドを拉致して船の中に入れ、探偵のレイと記者のコーエンを裁判における証人とするため、拉致した。自分たちはあえてクレーン車の使用に賛成することでドゥーガルドの焦りを誘発し、欠陥を認めさせるつもりだったがドゥーガルドはクレーン車の使用に反対しつつもクレーン車の構造的欠陥は認めないという立場をとったため、決定的な証拠にはならなかった。実は彼ら5人は地上100mの船の中ではなく、その近くの山中の熱帯林の中、地上僅か1フィートに目立たないようにつるされていた。空高く浮いている船の中は無人であり、予めワイヤーをつけたうえで片方ずつワイヤーを引っ張るという乱暴な方法で吊り上げたが、中は無人のため何の問題もなかった。一時はドゥーガルドはアイシャとアルドヘルムの正体に気付き落ち着きを取り戻したが、やはり自分たちのいる場所は地上300フィートだと思い込んだため、最終的にクレーン車の欠陥を自白する羽目になった。

 

・ドゥーガルド・パラモール
事故を起こしたパラモール社の社長。船内に拉致されたが、エスモンド・オレアリーを名乗って正体を隠していた。裁判では無罪を勝ち取ったが実際はクレーン車の構造的欠陥に気付いていたためクレーン車の使用に反対していた。しかし、使用に反対しつつもクレーン車の欠陥に触れていなかったため決定的な自白まではしなかった。四面楚歌の裁判で無罪を勝ち取っただけあって言い逃れの天才である。アイシャたちが自分の正体を看破したことでドゥーガルドもまたアイシャとアルドヘルムの正体に気付き、自分のいる船が地上300フィートでなく1フィート程度だと気づいたため、それまでおびえていた態度を一変させた。そして自分たちのいる船ではないのだからクレーン車を使っても何の問題もないと判断し、トランシーバーで外部にクレーン車の使用を許可したが、その直後に自分のいる船のすぐ外から作業の音が聞こえたうえに、自分たちのいる場所が日向にしては異様に涼しいことを思い出し、やはりここは300フィートの高さだと思い込んだ。慌てて作業中止を要請するもすでに作業に入っている(フリをしている)作業員は作業を撤回しなかったため、クレーン車の欠陥を自白した。

 

 

・パスム・コーエン
レイと同じく、十年前の事件とは無関係の人間(ただし取材は行っていたが)。ドゥーガルドの自白の証人が必要だったため、記者であるコーエンが拉致された。救出の夜まではクレーン車使用に反対していたが、次の日の朝になって他に方法がないことを悟り、クレーン車使用に賛成した。しかし、あくまで使用に反対するドゥーガルドによって人質にとられる。その直後ドゥーガルド、アイシャ、アルドヘルムの正体が露見したためドゥーガルドにトランシーバーを渡すのと引き換えに解放された。真実を知らなかったため、外から作業員の声が聞こえたときは焦ったが、結局今いる場所は地上1フィートだったと分かり安堵した。その後、レイからどの立場で記事を書くかは君の自由だと言われたときは自分の正義を貫くと返した。

 

・レイ・ヒガシヤマ
救出の日の朝、他の4人がまだ眠っているときにトランシーバー越しに動画で事故を数学的に解説するアルドヘルムの声を聴き、リッジウェイと同一人物と気付いた。リッジウェイと一緒にいるからにはモニカもアイシャだろうと推測できた。そこからこの誘拐事件の真相を見抜いたレイは外の作業員たちと協働し、ドゥーガルドに自白させるため、一芝居打つことになった。クレーン車がクルーザーを吊り上げる直前になり、慌てるドゥーガルドに建築会社の娘と工学博士が知恵を絞ったのだから確実に倒れるように設計されているとドゥーガルドを脅し、焦りを増大させた。救出された後はアイシャ達に見聞きしたことは一言一句漏らさず伝えると伝えた。

 

・デニス・ヒガシヤマ、ゲンゾー・ヒガシヤマ
レイの話を聴き遺族らの目的を果たさせるため、警察を巻き込んで熱帯林の中のクルーザー見つけさせたうえに一芝居打った。作戦の中心にいたのはゲンゾーの方らしい。

 

 

それでは皆さん。ごきげんよう