夕霧千尋の人生日記

大学生→社会人が小説・ゲームその他など自分の好きなことを書き綴ります

グアムの探偵 「ワームホールへのタンデムジャンプ」

皆さん。こんにちは。夕霧千尋です本日はグアムの探偵のお話を紹介したいと思います。グアムの探偵もいよいよ最終巻の3巻。今回紹介するワームホールへのタンデムジャンプは前に紹介した「天国へ向かう船」と同様、かなり不可思議な状況から話が始まります。ゲンゾーに雑用を押し付けられるレイやデニスにも必見です。

 

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ワームホールへのタンデムジャンプ」


この話は3巻の1話として掲載されている。タンデムジャンプとはスカイダイビングのやり方の一種で初心者のためにベテランのダイバーが体をくっつけて一緒に飛ぶ方法である。

 

「黄と赤の身体が溶け合うも同然に混ざり合い、橙色になったように見えた。しかしそれも一瞬のことで、二人の身体そのものが薄らぎだした。宙に消えつつあるではないか。」

 

<以下、ネタバレ注意>

 

 

 

 

 

 

 

<あらすじ>
アウロラというグアムの海岸で尾栗健輔という男がベテランのインストラクターと共にタンデムジャンプを行おうとしていた。予定時刻よりやや遅れたものの問題なく、スカイダイビングは行われた。ところが地上で待機している尾栗の妻の尾栗洋子とスタッフのボレハの目の前で空中の二人の身体がまるで混ざり合うように溶けて二人の身体は薄らぎ、宙に消えてしまった。地上に落ちてきたのはパラシュートとハーネスだけ。理解不能の現象に2人はこの事件の解決をイーストマウンテンリサーチ社に依頼した。果たして2人はどこへ行ってしまったのか。どうして2人の身体が空中で消えたのか。

<登場人物>

 

・レイ・ヒガシヤマ
イーストマウンテンリサーチ社の三代目。今回イーストマウンテンリサーチ社は警備に関する依頼を全てシステム化し、ネット上で受け付けることを決定した。しかし、いつの間にか自分が質問の対応係にされていることに不満を漏らしていた。その挙句、ゲンゾーの命で警備が手薄そうな家に警備契約のチラシを投げ込む役をやらされることになり、カンデラという森林地帯にある留守にしがちな古い別荘にチラシを投げ込むことになる。また、ギルバートという人の別荘にチラシを投げ込む際に上空にセスナが飛んでいるのを見てスカイダイビングができる環境を羨ましがっていた。事件発生後はデニスと共にスカイダイバー社を訪ね、その後健輔がグアムに来た理由を探り健輔の商談相手やパイロットから情報を聞き出した。

 

・デニス・ヒガシヤマ
イーストマウンテンリサーチ社の副所長。自社は警備会社も兼ねてはいるが友達のよしみで店舗や民家の留守番を頼まれ、報酬としてクズリアという菓子をもらうだけの日々に嫌気がさし、警備に関する相談をシステム化し、ネット上で全て受け付けることにした。「当邸宅の16台の監視カメラが毎日同じ時刻にピッと言う音を立てて録画が停止し、しばらく放置するとまた動き出す」と言う質問に「メンテのために自動的に再起動する設定だ」と返し、レイにその旨を書かせた。その後レイと共に古い別荘に警備契約のチラシを投げ込む仕事に追われることになる。事件発生後はレイと行動を共にし、スカイダイバー社で2人のスカイダイビングを担当したパイロットから話を聴きだすことに成功した。

 

・ゲンゾー・ヒガシヤマ
イーストマウンテンリサーチ社の所長。デニスの案に対し、相談を受け付ける時点で料金を取るべきと主張したが、知り合いからの依頼も含め確実に窓口を一本化したいというデニスの考えによって無料で相談を受けることになった。パソコンの使い方がわからないためネットの相談はレイとデニスに任せていたが、レイからはパソコンでカードの利用残高ギリギリまでオンラインカジノで遊んでいることを知られていた。また、デデドの社会保障カード偽造犯がネットで堂々と顧客を募る現状に不満を漏らしていた。相談を受け付けるだけでは消極的と判断し、留守にしがちな古い別荘にチラシを投げ込むようレイとデニスに指示する。この指示が後に重要な意味を持つことになる。

 

・J・ギルバート
本名は不明。カンデラという森林地帯にある別荘の所有者。この別荘には鉄製ベンチや石像風モルタル製オブジェなどが置いてある。古びているが柵を捉える監視カメラが10台以上設置してある。

 

・尾栗健輔(おぐりけんすけ)
今回、スカイダイビングを行った観光客。42歳。グアムへは三泊四日の夫婦旅行だが商談も兼ねてきており、旅行費を出張費で落そうとしている。洋酒の輸入を扱う貿易商社で海外部長を務めている。ダイビングの際は何らかの事情で少し飛び出すのが遅れたが問題なく飛び出した。初めてのスカイダイビングにしてはおびえている様子もなくインストラクターと談笑していた。しかし、空中でインストラクターと突如体が混ざり合い消え失せてしまった。

 

・尾栗洋子(おぐりようこ)
健輔の妻。39歳。地上で健輔が飛び降りてくるのを待ち、デジカメで撮影しようと思ったが上空2400mの飛行機を見つけられず上手く撮れなかった。心配性な性格でダイビング以前に行き帰りの飛行機ですら不安を感じていた。不安を落ち着かせようとネットで情報収集した挙句2004年に日本人がインストラクターと共にタンデムジャンプした挙句、パラシュートが開かず、予備のパラシュートも絡まって二人とも地面にたたきつけられ亡くなったというニュースを見て不安を増すことになってしまった。健輔が不整脈気味にもかかわらずダイビングを行うことを気にしていた。また息子の颯太が私立高校受験を前にして塾通いに忙しいのに夫婦二人で旅行しようとする健輔の行動を不審がっている。健輔に対する愛はそこまで強いわけでなく、世田谷に買った自宅のローン払いが家計を圧迫していることや健輔の昇給がままならないことについて健輔とよく口論をするらしい。健輔が消えてからは信じられないという思いで泣きじゃくっていたが、夫本人と言うより稼ぎ手を失うことを恐れている様子である。

 

・ボルハ
チャモロ人。29歳。健輔のダイビングを地上で監視するスタッフ。旅行ガイドも務める。レイとは10代の頃からの知り合い。心配性な洋子の不安をなだめていた。7年スタッフをやっているが事故は一度もないらしい。ジャンプが定刻より少し遅れたことと上空1300mを切った時点でパラシュートを開かなかった時点で疑問を持っており二人が空中で消えたときは信じられないという様子だった。本来地上待機するスタッフはパイロットと連絡を取るためのトランシーバーを持っていなくてはならないが、不測の事態が起こることはほぼないため、トランシーバーを持たないことが日常化しており、事件の時も持っていなかった。

 

・ブルーノ・ダウナー
ネバダ州出身でスカイダイビングのためのセスナの操縦を務めた。レイとデニスに話を訊かれた際は現実とは思えないという気分でうつろな目をしながら答えた。二人が飛んだ直後にセスナを旋回させたがそこで妙に不安定な降下を目撃したらしい。

 

スプリックスラムズデン
健輔と一緒にタンデムジャンプを行ったベテランのインストラクター。誠実そうな面立ちの37歳の黒人。グアムに来てから7年が経ち500回以上のダイブを経験している。インストラクターとしての勤務は週に2,3回ぐらいだが本業は大工。ダイビング中に健輔と体が混ざり合うように溶け、空中で消失した。

 

・マレナ・ラムズデン
スプリックスの妻。夫が行方不明と聞いて動揺し、鎮静剤の処方を受けている。

 

・チョウドリー
グアム警察の警部でレイ達とも顔なじみ。洋子とボルハの2人が空中で消失したという証言をまるで信じられず、パラシュートが開く前に2人の身体がハーネスから抜け出して海に落下したと判断し、沿岸警備隊に周辺海域を捜索させている。現在のところ何も見つかっていない。洋子が警察だけでなく探偵社を頼ったことを不快に感じている。

 

・根岸浩三(ねぎしこうぞう)
バーボンウイスキーをグアムに輸入する会社ヤチマタ・フーズ グアム支社の事業本部長。七三分けに黒縁眼鏡、浅黒く日焼けした肌の持ち主。今回尾栗健輔がグアムに来たのは彼との商談も兼ねている。以前から尾栗とは知り合いで年に何回か顔を合わせている。尾栗は数日分の滞在出張費を会社に請求していたが、商談は2時間で済んだらしい。東京のパ-ティーで尾栗と話している最中にこの取引を決めたらしいが、尾栗はそれ以上にフィリピンの農場主と意気投合していたらしい。

 

・ホルヘ・ヒルベルト
フィリピンの農場主。東京のパーティーに出席し、健輔と意気投合していた。根岸によるとその際、スカイダイビングについて話していたらしい。浅黒い皴だらけの顔に口ひげを生やした50代後半。世界各地を巡りながらスカイスポーツに明け暮れる道楽者。東京のパーティーに出席後、台湾へ渡りマカオで豪遊し、オーストラリアのシドニーに滞在している。奇妙なことに尾栗とスカイダイビングについて話していたにも関わらず東京のパーティー以後グアム入りした形跡がない。古美術品の収集家として知られており、貿易商になりたいと考えているが、元々土地で財を成した道楽者で芸術のこともわからず、学も感じられずテーブルマナーも最悪なことから尾栗に止めた方がいいと止められた。


<以下、更なるネタバレ注意>

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なにか感じるかって?きみはどうなんだ。俺が死んで悲しかったか?」

 

 

 

 

 

 

 


・尾栗健輔、スプリックスラムズデン、ブルーノ・ダウナー
今回の事件を計画した3人。ダイバーとインストラクター、パイロットの3人が共犯だった。実はラムズデンと健輔が飛び降りたのは洋子とボルハが確認したダイビングよりずっと前、パイロットのダウナーは時計を7分ほど早く進めたうえで予定時刻より7分早く飛び降りさせた。その際、わざと2人は37秒遅れて飛ぶことで後の偽ダイビングにつじつまを合わせようとした。2人が飛び降りた後ダウナーは旋回する様子をカメラに残し、その後改めてアウロラの上空に向かい、そこで偽ダイビングを行った。予めモルタルで2人の人形を作っておき、一時的にセスナを自動操縦させたうえで予定時刻より37秒遅らせ機外に放り投げた。当初の予定では2人の人形は風にあおられて海に落ち、その時の衝撃で粉々に砕け人形を塗った水性塗料は海に溶け、モルタルはバラバラになって海底に沈み、パラシュートやハーネスを残し、完全に行方不明。さらに一定期間経過後には死亡認定されるはずだった。ところがモルタルが風圧に耐えきれず、空中で粉砕。その様子が洋子たちには空中で2人の身体が混ざり合ったように見えた。
一方、先に飛び降りた尾栗とラムズデンはカンデラにある別荘に上空から侵入し、留守となっていた別荘に侵入して様々な古美術品を物色していた。そして午前4時にこの別荘の周囲を見張っている16台のカメラが一斉に停止する時刻を見計らい、ダウナーが運転してきたトラックに積み込んで逃走。それらの美術品を売りさばいて大金を手に入れる算段だった。彼らがこのような犯行に至った理由は日常生活に嫌気がさしていたため。ラムズデンは夫婦仲が冷え切っており、ダウナーは仕事を辞めたがっていた。尾栗の理由ははっきりとはしなかったが、洋子が自分に愛情を持っていないことに気付いていたためそのことに嫌気がさしたのだろう。尾栗が計画を立て、SNSで愚痴ばかりつぶやいていた2人にSNS上でメッセージを送り、計画を実行。大金を手に入れた後はネットで顧客を募っているデデドの社会保障カード偽造犯を当たり、新たな名前を手に入れて新しい人生を歩もうとしていた。しかし、ダウナーが探偵に疑われないようわざわざ顔写真と名前をパスポートを開いて強調した際に期限に年月日を指で隠したことが逆に怪しまれ、犯行に気付いたレイによって真夜中の別荘に待ち伏せされ、空き巣の現行犯として3人とも逮捕された。

 

・ホルヘ・ヒルベルト
彼自身はほとんど訪れないが、グアムに別荘を持っていた。彼の名は英語読みではJ(ジョージ)・ギルバートと読むが、スペイン語読みではホルヘ・ヒルベルト。農場主の金持ちで古美術の収集家だが、高価な美術品をほとんど留守のグアムの別荘に置くなどずぼらな性格。東京のパーティーで尾栗と会った際にグアムの別荘に美術品が置いてあることなどを話してしまったことで健輔に狙われることになった。健輔とスカイダイビングについて話したと周囲の人間は思っていたが、実際は自分の別荘の上空をスカイダイビングの飛行機が通るということを自慢していただけであった。そのことから尾栗はスカイダイビングを利用して別荘に侵入する計画を立て、実行した。また、尾栗はヒルベルトの別荘の監視の目をすり抜けるために警備の状況を知ろうとした。本人に直接聞くと怪しまれるので、あろうことかイーストマウンテンリサーチ社のホームページに別荘の警備状況について相談するよう勧めた。相談内容はYahoo知恵袋同様誰でも見ることができるので、尾栗はそれを見て16台のカメラが午前4時に1分間機能を停止することを知り、午前4時に脱出する計画を立てた。土地で成り上がった成金だけに金銭の管理に関してずぼらな人であり、やはり貿易商にはならないほうがいいだろう。

 

・マレナ・ラムズデン
先述のようにスプリックスとの関係は冷え切っていた。スプリックスが消えて鎮静剤をもらうほど取り乱していたはずが、実際は不倫相手と不貞行為に及んでいた。レイとデニスに不意を突かれて自宅に侵入され、悲鳴を上げた。不倫相手であるバスの運転手のアマドも慌てて、ズボンを拾い上げ、その場から逃走しようとしたが、レイに問い詰められた。しかし、2人の様子から彼らが何かをしたわけではないと判断したレイによって解放された。スプリックスは不貞行為に明け暮れる妻の下にほとんど帰らず、マレナの方もスプッリクスを酒飲みの賭博好きと評していたためどちらにも原因があるのだろう。

 

・尾栗洋子
夫の犯行を知った時は愕然とし、健輔に悲痛な叫びを浴びせたが、健輔から自分が死んで悲しいと感じていたのかと問われ、あぜんとした面持ちになった。今後この夫婦がどうなるのかわからないが、息子の颯太に悪影響が出ないことを望みたい。

 

・チョウドリー
探偵を邪魔者扱いしていたが事件の解決をしたことには素直に感謝と尊敬の念を表した。

 

・レイ・ヒガシヤマ、デニス・ヒガシヤマ
今回の事件を解決した功労者。犯行に気付いたきっかけはチラシ配りをしていた際にギルバートの別荘の上空にスカイダイビング用のセスナが飛んでいたことを思い出したから。そのことをチョウドリーからは普段から情報収集のために島中を探索するなんて探偵の鑑と言われたが、知っての通り実際はゲンゾーに言われてチラシ配りをしていただけである。このことをゲンゾーに話すと初めからお前らを学ばせるつもりだったとか言って調子に乗りそうだったので話すことはしなかったが、チラシ配りが全くの無駄にはならなかったことを喜んでいた。ちなみに警備契約に関してはまだ一件も申し込みがこないらしい。

 

 

それでは皆さん。ごきげんよう