夕霧千尋の人生日記

大学生→社会人が小説・ゲームその他など自分の好きなことを書き綴ります

グアムの探偵「シェトラン・ラグーナ・グアム・リゾート」

みなさん。こんにちは。夕霧千尋です。

先日、ゲリラ豪雨の中、アルバイト先の塾へ行ったら電子辞書が水没する憂き目に遭いました。とほほ・・・・・・。

 

それはともかく今回はグアムの探偵のお話の一つを紹介したいと思います。

今回はなんと殺人事件と言うグアムの探偵としては極めて珍しい事件が起きます。

 

 

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「シェトラン・ラグーナ・グアム・リゾート」


この話は2巻の4話に掲載されている。シェトラン・ラグーナ・グアム・リゾートとはグアムの高級ホテルである。

 

「レヴェリッジの独裁こそ諸悪の根源だ。あの男がのさばるようになってから、開発事業は談合や密約の嵐らしい。」


以下、ネタバレ注意

<あらすじ>
港湾局局長のトップ ニエマイア・レヴェリッジは闇金のアリツネ・サイトーに約束の三倍の額を要求されたうえ、拒否すれば裏取引の詳細をバラすと脅され、頭に血が上ったため、ホテルの11階で咄嗟に拳銃の引き金を引きサイトーを殺してしまった。焦ったレヴェリッジは1階に降りてプールに行った後、顧問弁護士のオルグレンに「ある男を訪ねたらその男が殺されていた。自分は嵌められた」と嘘をつき助けを求めた。話を聴いたオルグレンは八方に手を尽くし、なんとレヴェリッジは送検すらされなかった。事態を重く見た観光協会事務局長ハナムはイーストマウンテンリサーチ社に相談する。こうしてイーストマウンテンリサーチ社は殺人事件の解明と言う前代未聞の大仕事に乗り出す。

 

<登場人物>

 

・デニス・ヒガシヤマ
イーストマウンテンリサーチ社の副所長。今回の実質的な主役で顔見知りのハナムの依頼を受けて、検事の目を欺いたり、警視を相手にハッタリをかますなどとんでもなく大胆な手を打つ。その過程で情報を得ていくが、徐々にその行動を怪しまれていく。冒頭でレイを井の中の蛙にしないために一度警察をやらせた方が良かったのでは無いかと考えている。

 

・レイ・ヒガシヤマ
イーストマウンテンリサーチ社の三代目。今回はデニスのサポート役に回り、デニスが盗み出した情報を基に調査を行いデニスに情報提供を行った。今回の事件で警察に比べ、行政上の権限を持たない探偵と言う職業の非力さを痛感している。

 

・ゲンゾー・ヒガシヤマ
イーストマウンテンリサーチ社の所長。相変わらず皮肉を口にしている。デニスがレイが井の中の蛙にならないか心配だと言ったことに対し、自分も同じこと思っていたと言っている。事件発生後の探偵の権力の弱さを嘆いている(というより諦めている?)。

 

・ニエマイア・レヴェリッジ
港湾局の局長だが、黒い噂が絶えず、サイトーとのつながりは前々から噂されていたらしい。グアムでは観光産業も建築業も事務手続きの一切を港湾局が引き受けるためあらゆる事業に影響力を持っている。サイトーを銃殺した犯人であり、事件の日にサイトーを訪ねた事、銃声が鳴り響いた直後にホテルを出ていったことが分かっているのに逮捕どころか送検すらされていない。2人の観光客が撮った映像が証拠となったらしい。

 

・アリツネ・サイトー
非合法の金貸し屋。名前の通り日本人。闇金経営者だが、ローカルニュースでは日本人事業者と報道された(観光地としての信用を失墜させないため)。シェトランホテルの11階でレヴェリッジに銃殺された。

 

・アーロン・オルグレン
レヴェリッジの顧問弁護士。優秀な弁護士でレヴェリッジの助けに応じ、非公式にレヴェリッジ起訴後の取り調べを警察にシミュレートさせた。その結果、レヴェリッジは無罪になることが確実視されたため、起訴は断念された。

 

・ハナム・ロデリック
タモンの観光協会事務局で役員を務めている。今回の依頼者。日本人事業者がホテルで射殺されたとあっては観光協会の大損害。そこでレヴェリッジを逮捕させ、もぐりの闇金が撃ち殺されたという事実を報道させる。それによって腐敗した港湾局局長ともぐりの闇金業者がやり合ったと伝えることで観光客を安心させ、信頼を回復させようとしている。そのためにレヴェリッジの逮捕をイーストマウンテンリサーチ社に依頼した。

 

・カルロ・ミルフォード
ハガニアに事務所を構える検事。頭頂の剥げた神経質そうな面持ち。レヴェリッジが無罪になった経緯に多少なりとも疑問を抱いていたためデニスと面会し、事件の事前審議の内容を話した。本人にとっては起訴されてからが仕事であり、事前審議は司法の公平性と言う観点からも疑問だったが、ミルフォードを検事の道へ導いた恩師からの頼みと言うことで引き受けた。結果、彼含め複数の検事が無罪と判断し警察にその意見を伝えた。デニスにはレヴェリッジの無罪を証明した証拠が音声と映像による記録であること。その解析を行ったのがFBI科学捜査研究所とマージョラム法科学鑑定研究所であることを伝えた。法律を勉強している学生を装ったレイからの電話を受け、話している最中にデニスに証拠品の資料を盗み見された。

 

ノーフォーク
グアム警察の警部でデニスの知り合い。証拠品を提供した人物の身が危険にさらされているという依頼を受けたというデニスのブラフに引っかかり、デニスを警察の会議室へ通した。

 

・ハーラン・サモンド
グアム警察の警視。白髪頭で厳格そうな面持ち。デニスのブラフに引っかかり、依頼人の身の安全を確保するための会議に参加した。その際、映像の提供者の住所や名前を明かし、証拠となっている映像も見せた。一時はデニスのブラフを見抜きかけたが、レイのバックアップを受けたデニスのさらなるブラフによって結局最後までデニスのブラフを見抜けなかった。

 

・ダン・カーシュナー
グアム警察に映像の情報を提出した。カナダのカルガリーに住んでいる。先月に夫婦二人でグアム旅行しており、11歳の娘リサがいる。カメラを警察に提出する際、プライバシー保護に努めるよう念押しした。オルグレン弁護士からのアドバイスを受けているらしい。

 

・韓国人観光客
本名不明。もう一つの証拠をグアム警察に提出した。こちらは特にプライバシー保護を求めていない。

 

・ケイコ
デニスの妻。調査中のレイとデニスにペイレスでキャットフードを買ってくるよう頼む呑気な妻だが、後に呑気にもしていられない事態に直面する。

 

 

<レヴェリッジの無罪を証明した証拠品>
ダンから提出された映像と韓国人観光客の撮影した映像の2つがある。ダンから提出されたものは事件現場と同じホテルの11階から撮影された映像で水平線に太陽が沈んで少しした後に銃声が鳴ったことが記録されている。その代わり、レヴェリッジは映っていない。一方、韓国人学生の撮った映像は同じくホテルの11階から撮られたものだが、太陽が水平線に沈んだ直後にプールサイドにレヴェリッジがいたことが記録されている。その代わり、銃声は入っていない。どちらか一方だけでは決定的な証拠にはなり得ないが、2つを合わせることで日没直後にプールサイドにレヴェリッジがいることが確認されており、それと数秒差で銃声がしたことがわかり、レヴェリッジの無罪が証明された。これらの映像のうち、韓国人観光客が撮影した方はグアム警察からFBIを経由し、科学捜査研究所へ送られた。一方、ダンが撮影した映像はマージョラムへ仲介する際にFDOWP(証人保護プログラムを実施する機関)を通し送られた。ダンの身分を保証するため。

 

<以下、更なるネタバレ注意>

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あなたを誤解していた。悪徳港湾局長の顧問弁護士である以上、同じ穴の狢かと思っていた。犯罪の隠ぺいに加担する下僕ってことです。そこは素直に謝っておきたい。あなたは真っ当に、雇い主の無罪を立証しようとしたに過ぎない。」

 

 

 

 

 

 

 

 


・アーロン・オルグレン
デニスたちから金のためレヴェレリッジの犯罪をもみ消そうとした人物と思われていたが、実際はレヴェリッジの無罪を心から信じ、無罪証明のために真っ当な手段を模索していただけであった。しかし、雇い主の無実を信じるあまり、確証バイアス(自分にとって都合の良い情報にしか目が向かないこと。)が生じていた。証拠となった2つの映像は確かに同じ日に同じホテルで撮られたものであり、合成などの細工が入っていないことも分析によって明らかになっていた。しかし、ダンから送られた方の映像にはある問題があった。(後述)確証バイアスによってそれを見抜けなかったうえに専門機関の結果を鵜呑みにしたオルグレンと警察によってレヴェリッジは無罪と言う誤った結論が導かれたのだ。オルグレンが虚偽を自覚していれば、検察や警察によって嘘が見抜かれていただろうとデニスは分析している。デニスから事件の真相を聴いた後は自身の誤りを認め、レヴェリッジにこれ以上弁護ができないことを伝えた。そこでレヴェリッジに脅されたうえ暴行を受けたがそれによってレヴェリッジは現行犯逮捕された。

 

・ダン・カーシュナー
彼はある嘘をついていた。彼の撮った映像は細工はないが、問題は映像を撮影していた場所である。彼の映像はホテルの11階でなく、1階のプールで撮られたものであった。同じ日没を捉えたものでも1階で撮られたものと11階で撮られたものではタイムラグが生じる。そのため、実際には2つの映像は同時に取られたものではなく、レヴェリッジのアリバイは崩れ去った。ダンがこんな嘘をついた理由は妻に浮気がバレないようにするため。彼は妻がホテルのスパに行っている間にプールで若い女と浮気をしていた。その際に自身のアリバイ作りのために日没を撮影していたが、その映像に銃声が入っていたため後に妻からそれを警察の提出するよう言われ、拒否できず自分が映像を撮った時にどの場所にいたかを絶対に詮索しないことを条件に映像を提出した。彼がプライバシー保護を求めた理由も犯人からの報復を恐れたものでなく、自分の浮気を隠すため。本来、マージョラムが分析すれば、ダンがプールにいたことはわかるが、絶対にその解析をしないでくれと言われていたため、マージョラムは映像に細工が入っていないかのみを調べ、映像が撮られた場所は調べなかった。デニスからのメールを受け、一度は何も話せないと跳ねのけたもののデニスからプールの監視カメラ(実際はない)に全て映っている言われ、全てを白状するが妻にだけは秘密にしてほしいと言った。余程妻が怖いようである。だったら浮気なんてすんなよ。

 

・ニエマイア・レヴェリッジ
彼がオルグレンに自分は嵌められたと嘘をついたことでオルグレンがレヴェリッジの無実を信じ、謝った証拠を信じる羽目になった。レヴェリッジはオルグレンを有罪すら無実に変える策略家とみなしていたようだが、オルグレンにこれ以上弁護は出来ないと言われ、逆上してオルグレンにつかみかかり、脅迫と暴行の現行犯で逮捕された。実際、弁護士は依頼人の罪を極力軽くするものだが、事実を捻じ曲げてまで行うことは許されない。オルグレンも弁護士精神に則った弁護士だったのである。(これまでさんざん悪事をやらかしてきたと言われるレヴェリッジの顧問弁護士を務めていたので必ずしもシロとは言い切れない部分もあるが)

 

・サモンド、ノーフォーク、ミルフォード
デニスに騙されていたことに気付き、デニスとレイを罪に問うため開いた事前審議の場でレヴェリッジのアリバイが崩される場を目撃した。最初はデニスの言葉に半信半疑だったが、ダンからのメールを見て全てを悟った。全てが判明した後、自分たちが恥をかかずに済んだことに対しデニスに礼をした。

 

・デニス・ヒガシヤマ、レイ・ヒガシヤマ
レヴェリッジが雇ったチンピラによって事務所が銃撃され、自宅の倉庫が放火されるという憂き目にあった上に危うく犯罪者にされかけたが(まあ実際に行ったことはほぼ犯罪だが)その場でレヴェリッジのアリバイを崩したことで目的によって手段を正当化し罪に問われることはなかった。

 

・ゲンゾー・ヒガシヤマ
警察署の外でレイとデニスを待ち、大仕事を終えた二人を家まで送った。その際、デニスに対し、エルキュールと言った。(ポアロ並みの大仕事を成功させたというゲンゾーなりの誉め言葉である)

 

エヴァ、ケイコ
ゲンゾーとデニスの妻。倉庫が放火された際、家にいたため、消防署と探偵事務所に連絡を入れたうえで近隣住民と協力して家事を消し止めた。この二人も旦那に劣らない胆力の強さを誇る。事件が解決した後はオムレツを焼き、家族三人の帰りを待ちわびている。

 

 

それでは皆さん。ごきげんよう

 

グアムの探偵 2 (角川文庫)

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