夕霧千尋の人生日記

大学生→社会人が小説・ゲームその他など自分の好きなことを書き綴ります

グアムの探偵 「ラッテストーンは回らない」

みなさん。こんにちは。夕霧千尋です。今回もまたグアムの探偵の話を紹介しますが、グアムの探偵も残すところあと3話。これが終わったら新しい種類の記事を作っていきます。

 

 

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「ラッテストーンは回らない」


この話は3巻の3話に掲載されている。ラッテストーンとはグアムにある自然公園「ラッテストーン公園」にある遺跡である。建造物の土台と言う説が有力だが、その明確な目的はわかっていない。

 

チャモロ文化の栄えたラッテ期に建造されたとみられる、巨大遺跡の存在が裏づけられたのです」

 

 

<ネタバレ注意>

 

<あらすじ>
イーストマウンテンリサーチ社にデニスの知り合いであるアリカワとゲンゾーの知り合いである美月がやってきた。アリカワの恩師で美月の祖父であるトキフミ・セラ教授が失踪したので探してほしいという。グアム警察の動きが鈍いうえに美月の下に「Freeze!」と書かれた手紙が送られてきたのでこれを調べてもらうために美月とアリカワはイーストマウンテンリサーチ社を訪れたという。その手紙に書かれていることに沿ってセラ教授の自宅を捜索したところセラ教授本人の声を録音したICレコーダーが発見された。そこに録音されていた声によるとなんとセラ教授はグアムで巨大な遺跡の存在を裏付ける証拠を見つけたという。にわかには信じがたい話だが真面目一筋なセラ教授が陳腐な嘘をつくとも思えない。果たして巨大遺跡の存在は本当なのか。そしてセラ教授はどこに消えたのか。

 

<登場人物>
・レイ・ヒガシヤマ
イーストマウンテンリサーチ社の三代目。美月達の依頼を受け、美月と共にセラ教授を探して島のあちこちを回ることになる。レイは美月に多少気があったようだが、美月からは兄のような存在と思われている。いつもの推理力と勘で教授の声が録音されたICレコーダーを見つけたが、それ以降は巨大遺跡に関してもセラ教授の行方についてもさっぱりわからない様子。冒頭でハワイや沖縄に比べグアムの観光客が減少気味なことを気にしていた。また調査に向かう際は2人乗り(レイと美月しか乗れない)サリーンマスタングで行こうとしてもっと多くの人が乗れるデニスのジープやゲンゾーのキャデラックを進められるなど露骨なデート妨害に遭った。

 

・デニス・ヒガシヤマ
イーストマウンテリサーチ社の副所長。冒頭でアリカワと久しぶりの再開に喜んでいた。アリカワによると日系二世の会を欠席しがちらしい。今回は出番少なめ。

 

・ゲンゾー・ヒガシヤマ
イーストマウンテンリサーチ社の所長。美月とも知り合いで初めて美月を見たレイからは「隠し孫でもいたのか」と言われた。失踪したセラ教授とは旧知の仲。捜査中に昼食をとるレイの下に現れ、レイが成果を出せないことに嫌味を述べた。どうやら今回はレイよりも早く真相に気付いたようで昼食中のレイにヒントを与えた。

 

・トキフミ・セラ
グアム大学の名誉教授。あらゆる分野に精通する環境学者でゲンゾーとは旧知の仲。ゲンゾーより3つ年下だが、ゲンゾーと共に戦時中は一緒の収容所に入り、終戦後まもなく渡米し、在米邦人の元で暮らしてきた。幼い頃から堅物で曲がったことが大嫌いな性格、嘘もつかないし自分の見識にプライドを持つ人物で名声にも興味はないが、テレビにはよく出演し缶コーヒーのCMにも出ていた。バリガダヒルの丘の中腹にある鉄筋コンクリートでできた建物に住んでいる。かつては妻のトキコと一緒に暮らしていたが今は一人のため、半ば隠遁生活を送っている。しかし、書物や実験器具を備え、研究論文を定期的に発表していた。妻がいなくなって以降以前より乱雑で暗い雰囲気の部屋になっている。本当は地質調査に向いたもっと南部に住みたかったが、手続きが煩雑なため、今もここに暮らしている。3週間前にセラ教授のせいでどこか外国の海洋開発が中止になり損害を被ったという脅迫電話がかかってきておりその少し後に失踪した。後に教授の自宅から発見されたICレコーダーによると彼はグアムにチャモロ文化が栄えたラッテ期に建造された巨大遺跡の存在を裏付ける証拠を発見した。必要な情報はいずれ書類にまとめしかるべき機関に寄贈するという声が録音されていた。真面目で嘘をつかないセラ教授が一体なぜこんな突拍子もない話をしたのだろうか。

 

・世羅美月(せらみづき)
セラ教授の孫娘。小柄で華奢な19歳。ゲンゾーとは知り合いでゲンゾーのことを「ゲンゾーおじいちゃん」と呼んでいる。日本で名門大学に通っている。真面目なセラ教授も彼女のことは溺愛していたようである。セラ教授が失踪し、自分あてにとある手紙が届いたことでイーストマウンテンリサーチ社に相談する。レイと共に祖父を捜索する。最初はレイをほぼタメか年下と考えタメ口で話していたが、レイが年上と分かると敬語を使いだした。しかし、レイからタメ口でいいと言われ、兄ができたようだと喜んでいた。ICレコーダーの声をヒントに教授を探す姿はレイからララ・クロフト(宝探しビデオゲームトゥームレイダー」の女主人公)のようだと言われた。

 

・トマス・アリカワ
デニスの旧友で日系二世のグアム大学講師。セラ教授を恩師として慕っている。美月と共に探偵事務所に現れ、セラ教授の捜索を依頼した。セラ教授の真面目で厳格な性格を熟知しているため、ICレコーダーに記録された音声を耳にしたときは耳を疑っていた。

 

・ブライアン・オースティン
グアム議会の議員。デニスが警察を通じ、公的機関に問い合わせたことで送られてきた。セラ教授はグアムにとっての恩人であると認識しており、グアム議会は捜索のための費用を払い、発見すれば成功報酬も出すつもりでいるがその一方で議会もオースティン本人も巨大遺跡を発見したという教授の意見を信じられないでいる。また、各機関に問い合わせを行ったが、教授から情報が送られてきたという報告は入ってない。教授の安否がかかっているため、24時間後には警察が公開捜査に踏み切り、全ての経緯が公開されることをレイ達に伝え、その前に見つけてほしいと懇願した。

 

<美月のもとに届いた手紙>
美月のもとに届いた手紙にはセラ教授の筆跡で「Freeze!」と書かれていた。レイがその言葉通り冷凍庫にその手紙を放り込むとゲルインクボールペンで書かれた字が浮かび上がってきた。その字は「spray-canned insecticide」(殺虫剤スプレー缶)と言う言葉が書いてあった。セラ教授の自宅に向かうとそこには殺虫剤スプレー缶があったが、それは本当はシークレットケース(日常品っぽく見せかけた容器)であり、中にICレコーダーが入っていた。

 

<ICレコーダーに録音された声>
ICレコーダーにはセラ教授の声でチャモロ文化が栄えたラッテ期に建造された巨大遺跡の存在が裏付けられたという録音がされていた。さらにそれらを見つけるヒントは回転するラッテストーン、シャークピットの球体、ジェムランマングロ山の十字架であるという。セラ教授は情報をまとめ機関に寄贈するので、環境破壊にだけは気を付けて捜索と発掘してほしいと語っていた。一見、突拍子もない話だが真面目なセラ教授の言葉だけに冗談とも言いきれないのだとか。ラッテストーンは用途不明の石柱で回るものはグアム島内に一本もない。シャークピットはダイビングスポットだが、球体と呼べるものはない。ジェムランマングロ山の十字架は存在するが、近年作られたもので遺跡と関係するとは思えない。

 


<以下、更なるネタバレ注意>

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「観光振興のために参加型謎解きゲームを実施する。ついてはCMもしくはオープニング映像に、有名なトキフミ・セラ教授にご出演お願いしたいと」

 

 

 

 

 

 

 


・ブライアン・オースティン
セラ教授を誘拐・監禁していた張本人。セラ教授にかかってきた脅迫電話は彼がかけたもので、セラ教授を島の南部にある自分の別荘に監禁していた。監禁と言っても部屋に閉じ込めているわけではなく、偽の脅迫電話をかけたうえで身を隠すよう勧め、元々教授が研究のため移住したがっていた南部の別荘に住まわせただけであり、教授自身ときどき海水のサンプル収集のために別荘を出ていた。しかし、レイによるとだまして連れ去るのも立派な誘拐にあたる。彼がこのような犯行に至った理由は下記の通り。レイに問い詰められさんざん抵抗したが、最後には観念したうえで教授を始末するつもりなどは全くなかったと弁明。レイがその言葉を信じ、最後にオースティンをかばったことでオースティンはお咎めなしとなり、レイに感謝の言葉を述べた。

 

・レスター・サンチェス、ウーゴ・カブレラ、カミラ・リザマロ
全員30代から40歳くらいで観光企画課の役人。オースティンと協力して今回の一連の計画を立てた。セラ教授の巨大遺跡を見つけたという発言はやはり嘘である。真面目な彼がこんなことをした理由は参加型謎解きゲームを行うため。サンチェスら3人はグアムの全ての自然を満喫してもらう参加型謎解きゲームを企画し、そのCMかオープニング映像に出演してほしいとセラ教授に頼み込んだ。真面目ではあるが、缶コーヒーのCMに出演するなどメディアへの出演はやぶさかではない人物のためグアムへの海外旅行者誘致のためと説得されセラ教授は出演に応じた。セラ教授は映像ではカンペに顔を向け、いかにも素人芝居と言った話し方でなおかつ周囲のセットも一目で虚構と分かるものだったため、教授本人も安心して撮影に臨んだ。しかし、サンチェスらは最初から謎解きゲームを行うつもりはなく、その嘘っぽい映像も使うつもりはなかった。教授のそばにおいたICレコーダーで録音した声のみを使うつもりだった。映像ならばフィクションとわかるものも声だけならセラ教授の真面目な性格もあって真実味が増す。ヒントにあった回るラッテストーン、シャークピットの球体、ジェムランマングロ山の十字架も教授に本当に謎解きゲームを行うと信じさせるためのもの。ラッテストーンと球体は実際に存在しないため、後から追加すれば謎解きゲームのためのものとはっきりわかる。十字架も考古学とは結び付かないため、新たに追加すれば既存のものと混同されない。また、それら3つはそれぞれ陸、海、山に配置されているため、それらを巡ることでグアム中を巡り自然を満喫できるという話だった。しかし、上述の通り彼らは参加型謎解きゲームを行うつもりはなかった。彼らの真の狙いはICレコーダーに録音された教授の声が全世界に伝わることで世界的な関心をグアムに向けさせること。グアム州独自の法律によって考古学遺物の発見者に最高で時価総額の半分を払うことがあるので一獲千金を夢見るトレジャーハンターがグアムに殺到する。トレジャーハンターや報道陣の滞在費に加え、調査のための申請費を設定すればそれでも大もうけできる。ハワイや沖縄にくらべ観光客が減少気味だったグアムの観光が一気に回復。もちろん巨大遺跡など見つかるはずはないのだからその後も半永久的に客を呼び込める算段だった。しかし、無能なグアムの警察は殺虫剤スプレー缶に入っていたICレコーダーを見つけられなかったので、サンチェスらは謎解きゲームの一環と称して教授に例の手紙を書かせそれを美月に送った。美月に送ったのは彼女が名門大学で民族考古学を専攻していたから。そんな彼女宛の手紙となれば多少は真実味が増し巨大遺跡なんて馬鹿げた話だと一笑に付される危険が減る。美月が探偵でなく警察を頼ったとしても、どの道殺虫剤スプレー缶というヒントには気付いただろう。また、ICレコーダーがわかりやすい位置に置かれているとアリカワが教授宅を訪れた際に容易に発見し、警察に提出せずに保管する可能性がある。あくまで警察か探偵に見つけさせる必要があった。そうすることでニュースが公になり、グアムに多くの人が来る算段だった。ところが、美月がイーストマウンテンリサーチ社に依頼したことでレイたちが事実の一切を秘密にしてしまう。それを知ったオースティンは24時間という期限を付けたうえで調査を依頼した。24時間以内の解決など不可能と考えていたため、24時間後には彼らの思惑通り、ニュースが世界を駆け巡るはずだった。ところが事前にレイが謎を解いたため彼らの目論見はとん挫することになった。

 

・トキフミ・セラ
オースティンの別荘に拉致されていた。本人は脅迫から身を守るために匿われていたと思っていたが。彼自身は全く気付いていなかったが今回の事件の片棒を担いでいたことになる。いずれグアムに宝探し目当ての観光客が押し寄せ、セラ教授も事の真意を知ることになる。そのときオースティン達はセラ教授に全てを打ち明け理解を求めるつもりだったらしい。おそらくそうなればセラ教授は激怒するだろうし、世間に明るみになれば観光企画課は激しいバッシングを受けるだろうがそれでも一度火が付いたグアムの人気は衰えることはないと踏んでいたのだろうか。ちなみにオースティン達がICレコーダーを直接警察に届けなかったのはあくまでICレコーダーを耳にしたものが勝手に騒ぎすぎたにすぎず、セラ教授が詐欺の意図を持って声を吹き込んだわけではないと弁明する余地を残すため。事件が解決した後は美月と再会した。一時は自分の身を異様に心配する美月の様子を訝しんだが、レイが助け舟を出し、納得した。

 

・世羅美月
オースティンの別荘で涙を流しながら祖父と再会した。その際、レイが「セラ教授は脅迫電話を受けオースティンに匿われていた。オースティンは盗聴を恐れ本当のことを口にできなかったが犯人が逮捕されたので安心して真実を打ち明けられる」と方便で助け舟を出したため、それに納得した。レイはいささか純粋すぎると感じたが・・・

 

・レイ・ヒガシヤマ
3つの場所から何も見つからなかったことと見回った場所が陸海山と島の全ての自然を回れることから真相を導き、犯人にたどり着いた。と言っても犯人を突き止められたのはゲンゾーから「依頼人を疑え」と言われたことが大きい。最初はアリカワを疑っていたが、彼は美月の付き添いに過ぎないため、調査対象をオースティンに切り替えた。美月からは優しい兄のような男と思われており事件は解決したが結局今回も恋愛はダメだったようだ。

 

・ゲンゾー・ヒガシヤマ
レイよりも早く真相に気付いており、レイにアドバイスを送った。また、事件解決時にレイがオースティン達をかばって嘘をつくことも見越しており、予め美月に真実を教えていた。また、オースティンが最終的にセラ教授を殺す気だったのなら証拠(教授の毛髪や汗、指紋など)が残りまくる自分の別荘で生活などさせないことからオースティンがセラ教授を殺す気もないこともわかっていた。

 

それではみなさん。ごきげんよう

 

 

グアムの探偵 3 (角川文庫)

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