夕霧千尋の人生日記

大学生→社会人が小説・ゲームその他など自分の好きなことを書き綴ります

グアムの探偵「スプレッドウィズSNS」

みなさん、こんにちは。夕霧千尋です。今回もまた、グアムの探偵を紹介します。今回はSNSを通して起こったある事件を紹介します。

 

 

「スプレッド・ウィズSNS
この話は3巻の4話に掲載されている。

スプレッドとは「広がる」という意味である。

 

「グアムが戦場になったら商売あがったりだ。平和が保たれりゃ、それがなによりの報酬だよ」

 

 

以下、ネタバレ注意

 

 

<あらすじ>
イーストマウンテンリサーチ社にかつてないほど多くの依頼人が押し寄せていた。その全員が観光旅行中の日本人で、被害に遭った時間や場所は異なれど相談内容もほぼ一致している。観光中にスマホやデジカメで写真や動画を撮っていたら突如数人の軍人に囲まれ、名前やパスポート番号日本の住所に加え、後で基地に来てもらうことになるかもしれないと宿泊先まで聞かれるという脅迫に近い形の忠告を受け、教えてしまったという。ゲンゾーが総領事館に問い合わせるも米軍からは特に連絡も入っておらず、偽軍人か本物の軍人だとしても命令とは関係ない傍若無人な行為と聞いて日本人らは落ち着きを取り戻した。しかし、SNSを見るとその間も被害に遭ったというコメントが続出していた。犯人は一体何者なのか。何のためにこのような行為を行っているのか。

 

 

<登場人物>
・レイ・ヒガシヤマ
イーストマウンテンリサーチ社の三代目。前日まで友達と飲んでいたため、朝は遅れて職場に向かった。(探偵は夜遅くまで仕事することが珍しくないため言い訳には恵まれている。そのため、遅刻したことを特に気に留めていなかった)しかし、探偵社に見たこともないほど多くの人が押し寄せているのを見て即座に対応につかされる。観光客から聞いた話だと写真を撮った場所は撮影禁止どころか有名ではないが、観光地が多く謎の軍人たちの目的を不審がっていた。SNSから読み取った被害状況により軍人たちの動きを予測。次に現れる場所を予測したうえでセントジョーンズスクールに現れた軍人たちを待ち伏せた。軍人たちはそこで写真を撮ろうとしていた日本人移住者に声をかけようとしたが、そのとき総領事館がサイトに緊急告知を載せたたため、撤退しようとした。そこでレイはデニスが秋葉原で買ってきた超小型カメラ内蔵のメガネをかけて軍人に話しかけ彼らの顔を記録した。当初は軍人たちの目的は個人情報の収集と考えていたが・・・
SNSを見ているうちにアカウントをつくっては削除を繰り返し、何度もSNS上のコメントに被害に遭った時刻を尋ねる不思議な人物を見つけ、その人物に目を付ける。

 

・デニス・ヒガシヤマ
イーストマウンテンリサーチ社の副所長。昼前に遅刻してやってきたレイを叱り飛ばし、現状を説明したうえで即対応にあたらせた。(デニスはレイの遅刻の原因が友達と飲んでいたことだとわかっているようであった)相談者に対し、安全確保のために調査を続行するが個別に調査費を受け取ったりはしないことを説明した。(そのことでゲンゾーと口論になり、あろうことか依頼人たちの目の前でケンカしていた。)また、自分たちの事務所のホームページにも軍人らの被害に遭った人たちの対応方法に関する根治を乗せることにした。後に彼の言った一言が事の真相に一気に近づくきっかけとなった。

 

・ゲンゾー・ヒガシヤマ
イーストマウンテンリサーチ社の所長。デニス同様朝から多くの依頼人に対応せざるを得なくなった。総領事館を通じて米軍に確認を取り、今回の件が上層部の命令とは関係ないことを依頼者たちに伝えた。その後、被害が起きた場所から軍人の集団は一つしかないことを突き止める。レイが記録した映像から彼らは間違いなく本物の軍人であるとにらみ、調査に当たった。

 

・アンセルム・クレイニー
イーストマウンテンリサーチ社の所員。遅刻してきたレイに真っ先に気付いた。本来は来客者対応を行う立場ではないが、多くの日本人が詰めかけたことで対応せざるを得なくなった。軍人らの動きを予測したレイと共に軍人らを待ち伏せた。途中でショッピングモールを気にするレイを見て、軍服のコスプレを買った偽軍人だと疑っているのかもしれないが、コスプレ専門ショップにも軍服は売っていないと助言した。

 

・ヨアン・アボット
イーストマウンテンリサーチ社の所員。猪首で力自慢。アガニアショッピングセンターの一見以来久しぶりの登場。半年ほど前に見かけない車両(黒塗りのSUV)を目撃したためその動画を撮っていた。その車両は今回、軍人たちが移動に使用した車両と一致している。その動画を見たデニスがあることに気付く。

 

・謎の軍人たち
数人の軍人で黒塗りのSUV車に乗って島を一周するように移動しながら団体客でなく個人もしくは少人数で行動している日本人に手当たり次第に難癖をつけ、個人情報を聞き出すと共に撮った写真を消去させている。一応、軍の施設に近いところで撮影した写真も消去させているが、大半は明らかに軍の施設と関係ないところで撮った写真に難癖をつけている。鍛え抜かれた体つきといかめしい表情、馴染みのない腕章とバッジこそつけているが間違いなく正規のアメリカ空軍。見慣れない制服を着ていることから特殊な任務に従事する人物と思われる。また、ホルスター状のベルトを着けているが、中に入っているのは拳銃でなく、無線機。武器を携帯していないことが半端な軍事オタクでなく、本物の軍人である証拠にもなる。核と思われる30代半ばの空軍中尉の他、黒人の下士官や流ちょうな日本語を話す白人の下士官がいる。

 

・斉藤美奈(さいとうみな)、竹宮香織(たけみやかおり)
2人とも大学生でラッテストーン公園で自撮り棒でツーショット写真を撮っていたところ軍人らに囲まれ、名前やパスポート番号を控えられた。画像の隅に写った岩屋の防空壕(米軍の施設)を写してはいけないと言われたらしい。しかし、レイによると、もはやそれは昔の話でラッテストーン公園に軍人がいること自体が不可解な状況らしい。

 

・川西雄平(かわにしゆうへい)、川西淳子(かわにしじゅんこ)
五十代の夫婦。マンギラオのサンタ・テレシタ教会で写真を撮っていたところ軍人に囲まれ、帰国すら保障しかねると脅された。サンタ・テレシタ教会は撮影禁止どころか軍とは何の関係もない観光名所である。

 

・糸瀬紗菜(いとせさな)
マキシワンピースを着た20代後半の女性。ファッピ岬のサグァビーチで写真撮影をしていたところ他の人と同様に軍人に囲まれた。さらに近くにその騒動の様子をカメラに収めようとしていた外国人がいたが、その外国人も軍人に捕まり、猛然と抗議したものの結局画像を消去させられていた。

 

・井村修助(いむらしゅうすけ)
職場の5人で旅行に出向き、アファザン湾の天然プールで泳ぎつつベアロックを撮影したところ軍人に囲まれ、ずっと画面をのぞき込まれ、画像を消去するところまで見られた。

 

・吉村翔太(よしむらしょうた)
メリッツォの僧院を撮っていて軍人から注意を受けた。その際、いっそマイクロSDカードを渡そうと軍人に提案したのだが奇妙なことにいらないと言われた。他の人も同様らしい。写真を消去した程度ではデータそのものが残っているため、専用のアプリで簡単に復元されてしまう。軍人がそのことを知らないはずはないがなぜSDカードを回収しなかったのか。

 

SNS上の謎の人物
日本人が軍人の被害に遭ったことを次々報告するSNSの中で、アカウントを何度も変えながらひたすら何時に被害に遭ったのかを聞き出している謎の人物。騒ぎに気付いた新聞記者の仕業かとも思われたがそれならダイレクトメッセージでやり取りを求めた方が早い。総領事館や探偵業者の仕業でもない。ある人から被害に遭った時刻を聞き出すとそれより早く被害に遭った人はいないか訊きだし、競りのごとく何度も最も早く被害に遭った時間を訊き出そうとしている。

 

 

 


以下、更なるネタバレ注意

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


「何者かがSNS掲示板の炎上を見て、マブット中尉らの偽装工作に気付いた。最初に撮影を咎められた観光客こそ、本当に弾薬庫の入り口付近にいたと察しをつけたんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・イーニアス・マブット、ドーン・オールマン、ネヴィル・ギブンズ
日本人に難癖をつけて写真を消去させまくっていた軍人たち。核となる人物がマブット中尉、黒人の下士官がオールマン上級曹長、日本語を話す白人の下士官がギブンズ上級曹長。彼らの正体はデニスの発言からわかったが、第36軍需支援隊。輸送機でグアムの空軍基地に兵器類を持ち込み、海軍基地への分配もやっているが、実はグアムには世界最大の弾薬庫があり、そこへの搬入も行っている。弾薬庫は噂こそあれどその場所は公には秘密になっている。今年に入って強力な地下貫通爆弾バンカーバスターなども配備され一段と重要度も高まっている。そこへの弾薬の搬入は慎重に人目を避けて行われる。しかし、今朝運悪く日本人観光客が近くに寄り、画像を撮影してしまった。慌てたマブット中尉らは日本人観光客に詰め寄り、名前やパスポート番号を聞き出した。観光客の身柄を確保するとその現場を目撃されかねないので、日本人観光客には口止めを命じたうえで解放したが人の口に戸を立てるのは容易ではない。SNSが普及した現代ではなおさら。そこで緊急対策を余儀なくされ、非難を浴びるのを承知で多くの例の中に真実を埋めようとした。そのために島を回りながら日本人観光客に手当たり次第目を付け、本物と同じように尋問を繰り返した。本当に弾薬庫を撮影した人物には復元が不可能になるフォーマッターを使ったか、メモリーカードを没収したが、不特定多数の旅行者からメモリーカードを奪うと窃盗罪に問われるため、画像データの消去に留めるほかなかった。そうまでして情報の出どころをわからなくさせた理由は外国のスパイがグアムに入っているという情報を得たから。アカウントを使い捨てしながら最も早く軍隊の被害に遭った人を探していた人物がスパイであり、最も早く被害に遭った人物が写真を撮った場所こそ弾薬庫の場所だと目星をつけた。そのことに気付いたレイ達は最も早い7時15分ごろに被害が発生したシグワ川付近こそ弾薬庫の在り処と目星をつけ、レイはサリーン・マスタングで、デニスはジープでシグワ川に向かう。ところがそこに弾薬庫はなく、代わりに例の黒のSUV車や短機関銃などを持った軍人たちが一斉にこちらに銃口を向け、待っていた。実は7時15分に被害を受けたというコメントはスパイをかく乱するため、日本語の堪能なギブンズ上級曹長が仕組んだ罠だった。まんまとそれに引っかかり、レイとデニスはスパイの疑いをかけられて捕らわれるが、一瞬のスキをついてレイはデニスのジープで脱出。ギブンズが仕掛けた偽アカウントを除き、最初に被害を訴えた本物のアカウントを見つけたレイはメッセージを見てベタニアへ向かう。国家機密に関わることのため、しょうがないともいえるがやってることは完全に脅迫罪にあたる。このことに関して情状酌量が認められるかはわからないが、デニスは懲戒免職は間違いないと予想している。

 

・糸瀬紗菜
ベタニアに着いたレイの前には鉄製の扉があった。予想通り、そこは弾薬庫だった。しかし、その鉄製の扉から少し離れたところに紗菜は倒れていた。彼女の話によるとベアロックを撮影したと言っていた井村を名乗る男に車で送ると言われ、同乗したが気を失い、いつの間にかここにいたという。拳銃を持って近づくレイに一時はびくつくもイーストマウンテンリサーチ社の人であることを思い出すと安堵の表情を浮かべた。しかし、レイの背後からサイレンが聞こえ、レイが振り返るとそのスキをついて糸瀬はレイの拳銃を奪い取った。実は彼女こそがグアムに潜入している中国のスパイ ワン・シャオイェンであり、井村に連れてこられたというのは真っ赤なウソである。レイの接近を察知して咄嗟にその場に倒れたフリをし、レイのスキを突いたのだ。しかし、糸瀬がスパイだと最初から気付いていたレイは予め拳銃の装弾を抜いていたため、拳銃は空砲となり、レイに拘束された。

 

・デニス・ヒガシヤマ
レイの後ろに続き、弾薬庫に向かうが、ギブンズの罠に引っかかったためレイと共に拘束されてしまう。しかし、こっそりレイにジープのキーを渡し、自分は盾となってレイを逃がす。後に軍人と共にレイのところに現れたときは既に私立探偵のライセンスを確認したのかマブットの態度も軟化していた。

 

・レイ・ヒガシヤマ
一度はギブンズの罠にかかり、スパイの疑いをかけられるもスパイの糸瀬に弾を入れていない銃を渡すことでスキをつくった。事件後は立場上、報酬を支払うことはできないが弾薬庫の場所は口外しないというレイに対し、マブットは感謝の意を述べた。

 

それでは皆さん。ごきげんよう

 

 

グアムの探偵 (角川文庫)

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