夕霧千尋の人生日記

大学生→社会人が小説・ゲームその他など自分の好きなことを書き綴ります

グアムの探偵 「メモリアル・ホスピタルの憂鬱」

皆さん。こんにちは。夕霧千尋です。今回はいつもと同様、グアムの探偵を紹介します。なかなか悲惨な真相が明らかになるので覚悟してみてください。

 

 

 


「メモリアル・ホスピタルの憂鬱」
この話は3巻の2話に掲載されている。メモリアル・ホスピタルとはグアム随一の大病院である。

 

「初めまして。デニスおじさんだよ」

 

<以下、ネタバレ注意>

 

 

<あらすじ>
イーストマウンテンリサーチ社にある依頼が届いた。メモリアル病院に行く予定の7歳の日本人少女を警護してほしいと言ったものだった。レイが別の案件で手がいっぱいだったので、子ども好きと言うこともあり、デニスが警護に当たることになった。空港に向かうと例の少女とその両親に出会った。とりあえずメモリアル病院に向かう一家だったが、その道中不審な日本人と不良上がりのギャングが一台の車に乗って追いかけてきた。デニスの指示と行動でその場は切り抜けられたもののなぜ一家がギャングに追われているのかわからない。病院で一家に事情を聴くと、少女は夫婦の実の子でないことが分かった。美咲という少女は2年前に橋浦夫妻によって施設から引き取られたが、その半年後からしばしば突然体が激痛に襲われるという原因不明の発作に苦しむようになったという。果たして美咲の発作の原因は何なのか。そして一家はなぜギャングに追われているのか。

 

<登場人物>

 

・デニス・ヒガシヤマ
イーストマウンテンリサーチ社の副所長で今回の主役。かつて腕の中に抱えていたレイがいつの間にか働き手となっていることに人生の不思議さを感じていた。と同時にゲンゾーが孫に冷やかされてムキになる心情も理解できるようになったのだとか。冒頭では小さい子を連れてくる依頼人のために事務所に絵本を置くなどの工夫をしてはどうかと提案した。なんでもカマチョ調査サービスという探偵社は海辺にあっていつでも子どもたちが遊べるため、客を奪われる可能性があるらしい。そのような心配りをすることからゲンゾーに子供好きである点を認められ、(不本意ながらも)今回の依頼を任されることになる。最初はケースワーカー代理同然の仕事にやる気を出せなかったが、依頼人がチンピラに追われていることを知り、やる気を出す。最初に美咲と出会った時「デニスおじさんだよ」と名乗ったが、自分の子ども好きっぷりに無自覚なのかなぜそう名乗ってしまったのかわからないというリアクションをしていた。橋浦夫妻や顔なじみの医師から情報を聴き、施設に引き取られる以前の美咲の過去に原因があるのではないかと考えるようになる。事件解決のため、レイを日本へ送る。

 

・レイ・ヒガシヤマ
イーストマウンテンリサーチ社の三代目。冒頭で事務所を子ども受けのいいものにしようとするデニスを冷やかし、デニスからこれが自分の息子とは信じられないと思われていた。デニスのサポートとして日本の探偵社に問い合わせを行ったり、日本に直接出向いたりした。その際にしまなみ街道をサイクリングしたいと言っていたが、デニスからはとんぼ返りしてもらうと言われた。

 

・ゲンゾー・ヒガシヤマ
イーストマウンテンリサーチ社の所長。事務所を子ども受けのいいものにしようとするデニスを冷やかしていたが、本人もレイから「じっちゃんの一日はスーパーで店員とおしゃべりしたり、バーで一杯ひっかけてレイを車で迎えによこす程度」だとからかわれ、ムキになっていた。橋浦夫妻によると事務所はハンサムな息子と親切なおじいさんがいると言われているらしく、その言葉を聴いたデニスは自分はハズレかと落ち込むと共に誰がゲンゾーを見て親切などと言う印象を抱いたのか不思議がっていた。

 

・橋浦美咲(はしうらみさき)
橋浦夫妻に連れられてグアムにやってきた7歳の少女。2年前まで施設にいたが、2歳の頃に杉並区の公園に1人でいたところを保護されており、全国の産婦人科に該当者もおらず、生い立ちは全く不明。病院以外で産み落とされこっそり育てられたのち捨てられたと推測される。5歳の時に子育てを望む橋浦夫妻に引き取られたうえで養子縁組をされるが、その半年後から謎の激痛に苛まれることになる。施設にいたときはそんなことはなかったらしい。特に夜寝ているときに強い痛みに襲われるため睡眠不足で抑うつ気味。学校には行っているが、突然激痛が発症するので不登校気味。日本の病院では線維筋痛症と診断された。これは全身に慢性的に激痛が生じ、原因不明の場合にそう呼ばれるのであって、原因がはっきりしないため対処のしようがない。最初は夫妻も仮病を疑ったがMRI検査によると確かに痛みに過剰に反応する部分が見られるらしい。原因はとりあえず心因症ではないかという話になったが、抗うつ剤抗不安剤が効かず、対処方法は今もって不明。しかし、グアムに連れてきたところなぜか調子が良くなり、激しい痛みは生じなくなったためそれ以降何度かグアムの病院を訪れては検査をしてもらっている。日本にいる時は夏でも激痛が発症するので気温の差が原因ではない様子。デニスに対し、最初は人見知りのような反応を見せていたが、徐々に握手を求めたり、パンを渡すなど信頼する様子を見せている。

 

・橋浦椙人(はしうらすぎと)
美咲の育ての親。38歳。美咲をグアムの病院に連れてきたが、その道中で不審な男に狙われる可能性があったため、イーストマウンテンリサーチ社に警護をお願いした。AEDや配管凍結防止用ヒーターなどの保健福祉機器や救急資機材の製造販売を行う会社、株式会社イズミのエンジニアで課長。真っ当な勤め先で真面目な性格。奥さんとの関係も良好でやくざに狙われる理由は全くない。結婚したばかりの頃は子どもがいなくてもいいと思っていたが、幸い仕事もうまくいき生活に余裕ができたので子育てを望むようになり里親希望者として登録し、美咲を引き取った。しかし、その半年後から美咲は激痛に苛まれるようになり、あちこちの病院をたらいまわしにされた挙句、藁にも縋る思いでグアムの病院を訪れたところ美咲の症状が和らいだことから以降もたびたびグアムを訪れている。しかし、2度目にグアムに来た時の帰りの空港から謎の男につけ回されることになり、いきなり近づいてきた男が美咲の腕をつかんだこともあったので今回は最初から探偵社に依頼することになった。タムニングの1号線に近いコンドミニアムに宿泊しており年末年始の12日間をグアムで滞在することになっている。今回の旅行は椙人の海外出張を兼ねており、島内のAEDのメンテナンスを行う業務を担っている。そのため、旅費の一部は会社負担になっている。

 

・橋浦杏奈(はしうらあんな)
美咲の育ての親で椙人の妻。35歳。美咲の激痛に心を痛めると共に自身も看病のせいで疲労を貯めている。美咲の痛みの原因が肌アレルギーにあるのではないかと疑い、様々な生地で十数種類の服を作らせたが、いずれも効果はない。その際、新品の服も古着も試したらしい。皴だらけのレシートを財布にねじ込んだり、期限が残っているスタンプカードやクーポンを棄てていることからデニスからガサツな性格と思われている。彼女が捨てたレシートの中に株式会社キッズメイドにオーダーメイド服を作らせたときのものが残っており、内訳としてはデザイン費5000円 裁縫他作業代10000円 プリント代1000円 ボタン・ファスナー等部品項目費400円 雑費600円となっていた。

 

・ベナヴェンテ
グアム屈指の大病院メモリアル病院に勤務する脳神経外科医。デニスの知り合いでゲンゾーの健康診断も行っている。訛りは強いが日本語を話せる。美咲のMRI検査を行っているが原因はやはり不明。心の問題かもしれないと考えているが憶測では語れないと言っている。

 

・ジョーン・ミカエル・クルース
アプラ港に巣食うギャングの一味。大事件は起こさないが裏でこそこそ違法行為に及んでは生計を立てている。それでも暴行・強盗・空き巣などを行う札付きのワル。日本人のやくざと組んで橋浦一家を追い回している。幹線道路で橋浦一家の乗る病院の専用車に近づいたがデニスの機転と背後から近づくパトカーによって振り切られた。

 

・酒那市東(しゅなしとう)
日本の関西を拠点とするヤクザ踏於組の関連会社の従業員(ということになっているが、実際はほぼ組員)。刈り上げた髪に口ひげを蓄えている。一家が到着する30分前の便で到着し、税関カウンターを抜けず、手荷物受取所で待ち伏せしていた。以前も空港で一家を待ち伏せし、美咲の腕をつかんだこともあったがそのときは杏奈が空港警察を呼んだことで事なきを得た。日本には現れず、グアムにのみ出没するがその理由や橋浦一家を追う理由は不明。

 

 

<以下、更なるネタバレ注意>

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「美咲はおまえらの生け贄か。冗談じゃねえぞ、子供を何だと思ってる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 


・橋浦椙人、橋浦杏奈
美咲に原因不明の激痛を起こさせた張本人。椙人が務める株式会社イズミは導電性繊維を利用して服そのものを導電配線にし、着るだけで心拍や血圧を測定できるウェアラブルバイスを開発中である。商品自体は開発中だが、高伸縮性の導電性繊維でできた布は開発済みであり、椙人はその生地を職場からくすねてキッズメイドに持ち込み、美咲のパジャマをつくらせて美咲に着せ、ベッドの下に電気を発生される装置を仕込んで美咲の身体に電流を流し、原因不明の激痛が起きると美咲に自覚させた。美咲が寝ているときに激痛に襲われたのはこのため。美咲は寝ているとき以外にも弱い痛みに襲われることがあったが、それは痛みを恐れるあまり普段から錯覚が起きるようになっていた。橋浦夫妻がこのような行為に至った理由は大麻を密輸して大儲けをするため。医療用大麻は日本では違法だが、グアムでは合法であり治療のためと称して夫妻は医師から大量の大麻を受け取っていた。元々日本人のためグアムを頻繁に訪れることができない。そのため医者もよくない行為だと知りながら一度に多くの医療用大麻を渡していた。グアムで痛みが和らいだのも環境が原因ではなく、単に夫妻が電気を流すことを辞めたからに過ぎない。イズミは高度管理医療機器の修理業許可を取得しており故障AEDは日本への輸入通関時当該企業あてに限り検査が実施されない。その法の穴を利用して、AED大麻を詰め込み日本へ輸出していた。美咲に医療用大麻は必要ないのでそれらは全て夫婦の丸儲けになる算段だった。夫妻の生活に不審な点が見当たらなかったのも結婚当初から悪事を前提とした暮らしをしていたからで、美咲を引き取ったのもこの計画に利用するため身寄りのない子を必要としたから。自らの儲けのために身寄りのない子供を痛めつけるなど到底人間とは思えない行為を行うクズ共でその様子はヤクザからも呆れられるほど。その挙句、美咲をグアムの学校に転校させ、自前で大麻を育成する許可を申請していた。即ち自前の大麻密造工場と密輸ルートを作るつもりだった。オーダーメイド服を作ったレシートの中に生地費がなかったことからデニスに生地は持ち込みだったのではないかと疑われ、そこから持ち込んだ生地全てに導電性繊維が含まれていたことや美咲を引き取る前からオーダーメイド服を発注していたことが発覚。悪事が露呈した。椙人はグアムの旅行中にこっそりと抜け出して日本の会社に戻り、そこで大麻を詰めたAEDを受け取っているところと酒那とデニス達に見つかり、さんざん抵抗したが、最後には一連の非道な行為をデニスにひどく叱咤され呆然とした面持ちになり逮捕された。

 

・ベナヴェンテ
対症療法に過ぎないのは承知の上でよくない行為と知りつつも医療用大麻を大量に夫妻に渡していた。できれば公に認めたくはない方法だったのでデニスにもこのことを明かしていなかったが、デニスに真相を見抜かれると、複数の医師で相談したうえで当面はこの方法で行くことを決めたことを明かした。

 

・ジョーン・ミカエル・クルース、酒那市東
橋浦夫妻を追っていたチンピラたちだが、その目的はAEDに入っている大麻を奪うこと。元々セコい性格のクルースはハイエナのごとく大麻の密輸に詳しく敏感である。他者の利益をかすめ取るため知り合いのヤクザである酒那を呼んで橋本夫妻から大麻を奪おうとした。何らかの方法で診療予約の情報をつかんだことから橋浦夫妻の動きを知り、大麻強奪を企てた。密輸方法に気付いたクルースは空港で夫妻を待ち伏せし、大麻を奪おうとした。しかし、その動きに気付いた橋浦夫妻はイーストマウンテンリサーチ社に警護を依頼したのだった。最終的にデニスによって犯行は暴かれ、橋浦夫妻ともども逮捕された。橋浦夫妻が密輸した大麻を奪おうとするなど橋浦夫妻と同じ穴の狢ともいえるクズだが、酒那は最後に「俺がいうのもなんだが、子どもの虐待だけは許せねえ」と口にした。同情の余地はないが彼なりに守るべき信条はあったのだろうか。

 

・沼瀬抄造(ぬませしょうぞう)
川崎署の警部。日本では権限を持たないデニスに代わり、グアム警察の要請を受けて橋浦椙人逮捕の陣頭指揮を執った。

 

・橋浦美咲
病院以外の場所で生まれて実の親に捨てられ、引き取った里親も自分を利用して大麻の密輸を企んでいたという悲惨に運命をたどってしまった少女。もちろん事件後は橋浦夫妻とは離れ児童相談所と福祉事務所の職員によって保護された。これから彼女がどうなるのかはわからない。しかし、こんどこそ真っ当な真の親の元に行きついて欲しいものである。体を襲う激痛は電気が流れる恐れが無くなった以上起こらないが、まだ錯覚による痛みや痛覚に敏感になったことが残っている。しかし、それらも時間をかけて回復していくことだろう。

 

・デニス・ヒガシヤマ
事件の全てを解決した後、美咲にデニスおじさんと呼ばれたうえでキスをされ、別れを告げられた。そのことで散々レイとゲンゾーに冷やかされたデニスは怒って、(冗談だが)今すぐ日本に行ってあの子の里親になると宣言した。

 

・レイ・ヒガシヤマ、ゲンゾー・ヒガシヤマ
美咲にデニスおじさんとよばれたデニスをからかった。デニスが「日本に行く」と宣言した時はレイは「数日で戻ってくる。下手すりゃ着いたその足で戻ってくる。」とからかい、ゲンゾーは一生戻ってこない覚悟で行けばいいが、その前に今夜の晩飯を聞いておきたいと皮肉を口にされた。ちなみにベナヴェンテによるとゲンゾーは食生活に改善の余地が見られ、魚と野菜をもっと多く摂取しなくてはならないがゲンゾーは揚げ魚とフライドポテトで間に合わせているらしい。

 

それでは皆さん。ごきげんよう