夕霧千尋の人生日記

大学生→社会人が小説・ゲームその他など自分の好きなことを書き綴ります

グアムの探偵 「未明のバリガダハイツ」

こんにちは。夕霧千尋です。もはや恒例となりつつあるグアムの探偵シリーズ。今回はその一つを紹介します。

 

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未明のバリガタハイツ
この話は1巻の2話に掲載されている。バリガダハイツとはグアムの高級住宅街である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


「たわけ。五秒で解けるはずがあるか。オーバーにいうなと、これまで一万回は注意したろうが」

 

 

 

 

 

 

 

以下、ネタバレ


<あらすじ>
イーストマウンテンリサーチ社を訪れたキヨミ・ミドルトンは既婚者だが、榎根というかつての同級生のストーカー行為に悩まされていた。しかし、レイたちが榎根のもとを訪れると榎根は自分とキヨミはかつての恋人でキヨミは今の夫のタツヒコに金に任せたプレゼント攻勢をくらい、父親の借金のためにそれらの金を使ってしまったキヨミはタツヒコのプロポーズを断り切れず、半ば強引にに結婚させられてしまったのだと言う。榎根からその話を聴いたレイたちはキヨミを問い詰めた。するとキヨミはその事実をみとめ、さらに自分はタツヒコからDVにあっているという事実を明かす。キヨミは悩んだ結果、榎根を遠ざけることをレイたちに任せ、タツヒコは自分が説得して、離婚を切り出すと宣言した。しかし、その日の夜タツヒコが榎根に銃で撃たれたという知らせが入ってきた。

 


<登場人物>
・レイ・ヒガシヤマ
イーストマウンテンリサーチ社の三代目。今回はデニスと共に行動し、榎根を説得したり、キヨミの話を聴いたりしながら真実に向かう。


・デニス・ヒガシヤマ
イーストマウンテンリサーチ社の副所長。榎根の部屋の観察をレイに任せ、自分は榎根を説得していた。ゲンゾーに対し、「人を説得するのが上手い」と褒めていたもの、物語の最後の方でゲンゾーに「ココナッツ屋台で刺されてりゃな」とかなりブラックな冗談を言っていた。

 

・ゲンゾー・ヒガシヤマ
イーストマウンテンリサーチ社の所長。今回はある事実から他の二人より早く犯人の目星をつけていた。最後には犯人の説得も行うなど、今回の事件解決は実質的に彼の功績と言える。


・キヨミ・ミドルトン
ストーカー被害を探偵社に訴えた女性。旧姓は宮沢清美(みやさわきよみ)。結婚してからグアムに住み始めたが、結婚してからまだ1か月も経っていない。以前は杉並区の病院で看護師をしていた。最初は榎根はただの同級生でストーカーと話していたが、問い詰められると実際は付き合っていたことを告白。タツヒコからは金によって半ば強引に結婚させられ、日常的にDVを受けており、左のこめかみにはタツヒコにバットで殴られたときにできた内出血のあとがある。


タツヒコ・ミドルトン
キヨミの夫。ジュージ・シップトンというペンネームで作家をしており、全米ベストセラーの「トーキョー・インヴェスティゲーション」を書いた。にも関わらず、探偵に対する料金を気にして、探偵への依頼を渋るなどケチな様子が見られる。キヨミとは足を捻挫して入院していた時に知り合い、半ば強引に結婚し、日常的にDVをふるっていた。キヨミの外出時にもいつもついてくるらしい。物語途中で榎根に銃で撃たれて重傷を負ったが、命に別状はないらしい。


・榎根祥也(えねしょうや)
はじめはキヨミのストーカーと思われたが、実際は元恋人。キヨミの結婚を知るとすごい剣幕でキヨミの両親のもとに怒鳴り込み、激しく取り乱した。その後、グアムに渡り、キヨミと話し合おうとした。19歳の時に職場でいじめられていた後輩をかばって、上司を殴り、傷害事件を起こしたとして、逮捕される。その後、親からも縁を切られ誰にも頼らず一人で暮らしてきた。アウトリガーホテルの最安値の部屋に宿泊し、食費を切り詰めつつ、生活していたが、帰国予定日まで残り一日となり、話し合おうとキヨミの家に直接向かったところ、タツヒコが興奮して銃を持ち出したためそれを奪い、さらにバットまで持ち出されたために発砲して、タツヒコに重傷を負わせた後、逃走した。


・アダム・バージェス
榎根の銃撃事件を担当している警部。ゲンゾーとは昔からの知り合いでデニスやレイのことも知っている。

 

以下、更なるネタバレ注意

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


「いつも暴力を振るってきた。母も父の肩を持った。榎根君は唯一の理解者だった。なのに父母は榎根君との仲も否定した。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・キヨミ・ミドルトン
榎根と元々付き合っていたことやタツヒコに金の力で強引に結婚を迫られていたことは本当であった。(父親の事業の失敗のため、借金があり、キヨミの母がタツヒコのプレゼントを質屋に売っても返しきれていなかった。)
しかし、タツヒコからDVを受けていたことはウソであり、タツヒコを説得して離婚するつもりもなく、タツヒコを殺して、莫大な遺産を相続し、榎根と結ばれる予定だった。DVの傷については自作自演であり、レイは髪に隠れるこめかみにいずれ治る程度の内出血をの傷を負うのはできすぎであり、バットに血や髪の毛が付着するならもっと強く殴らなくてはいけないのにキヨミの傷が浅すぎることに違和感を覚えていた。榎根がタツヒコを撃ったのは正当防衛でなく、予めキヨミが銃を渡していたから。家の庭にある監視カメラのモーションセンサーとモノラルの音声を巧みに利用し、榎根と組んで正当防衛に見せかけタツヒコを殺すつもりだったが致命傷にならなかった。そのため、病院で人工呼吸器を動かし、タツヒコの息の根を止めようとしたところをレイに見つかり自白した。ちなみにタツヒコからはDVを受けていなかったが、借金まみれの父からは本当にDVを受けていた。母もキヨミに味方しなかったため、榎根を唯一の理解者と感じ、結ばれることを望んでいたが、レイからは榎根を「恋人」でなく、「理解者」とよんだことに自分本位な響きがこもっていると指摘された。親の都合で人生を左右された彼女が一概に悪いとは言い切れないが、遺産のために夫を殺そうとしたのは同情できないだろう。


・榎根祥也
キヨミと組んでタツヒコを殺そうとしていた。親からも見捨てられた榎根にとってキヨミは心の支えであり、自分の人生をなげうってでもキヨミを救い、ともに将来を築こうとした。食費を節約しているのも関わらず、高い命中率を誇るほど射撃の腕を磨いていたことからレイによってキヨミと手を組んでいることを看破された。元の計画では後に出頭しても正当防衛と情状酌量により、執行猶予が付くと考えていた。榎根はこれで前科がつくが、既に傷害事件を起こして、前科者のため大きな傷にはならない。しかし、タツヒコが死ななかったことで計画が狂い、当てもなく島中をさまよい、ココナッツ屋台で仕事をもらって働いているうちに自分のしたことの罪深さが身に染みてきたところをゲンゾーに説得され、ゲンゾーが作ったココナッツの刺身を口にして心が落ち着き、素直に逮捕された。彼もまたキヨミ同様悲しい運命をたどってしまったと言える。


タツヒコ・ミドルトン
実は彼はキヨミと榎根が元恋人であることなど全く知らず、完全にただのストーカーと信じ切っていた。タツヒコは警察にそのことを相談したが、捜査状況が中途半端で、キヨミは「自分は夫からDVを受けている」という事実認定をさせることができなかった。そこでキヨミは探偵を頼り、その事実認定をさせようとした。タツヒコがキヨミを追っていたのはキヨミを束縛するためではなく、むやみに探偵を頼るキヨミの行動が腑に落ちなかったからである。回復後は車いす生活をしつつ、心が満たされないと嘆いていたが、ゲンゾーに「より奥深い話が書ける」と励まされ、立ち直り始めていた。キヨミに一方的に結婚を迫ったこと(この際にタツヒコがキヨミの親の借金を知っていたかどうかは定かでない)は強引だが、日本とアメリカの文化の違いがある以上ある程度は仕方ないことなのかもしれない。いずれにしろ殺される程ひどいことはしていないと言える。


・キヨミの両親
キヨミに対し、DVを振るっていたばかりか、榎根とキヨミの結婚を榎根が貧乏であるという理由で否定し、プレゼントを贈ったタツヒコとの結婚を決めてしまうなど今回の登場人物の中では最悪のクズたち。正直タツヒコよりこっちが殺されるべきだったのではないか。(キヨミにとっては榎根と生活するための資金が必要であり、親を殺しても金は得られないため、殺す意味がなかったのだろうが)キヨミの話に出てくるのみで本人は登場せず、存命かも明らかでないが、どのみち碌な人間ではない。


・レイ・ヒガシヤマ
ゲンゾーの助けを得て真実にたどり着き、キヨミの殺人未遂の現場を抑えたうえでキヨミの犯行を看破した。キヨミに「あなたは親に恵まれているから自分の気持ちはわからない」と言われると「自分は自分であり、親の悪い面まで生き写しになっていい理由はない」と返した。


・デニス・ヒガシヤマ
今回は親や息子に比べ出番が少ないが昔、小説家と探偵のどちらを目指すかで迷っていたことが明かされた。ゲンゾーは彼の小説を読んだ結果探偵に向いていると判断したらしい。


・ゲンゾー・ヒガシヤマ
キヨミの涙に注目し、他の二人より早くキヨミが怪しいとにらみを着けていた。悔し涙は交感神経が優位になってカリウムや塩素など電解質の物質を多く含むため、副交感神経が優位になっている悲しみの涙より粘りけがあることと長年培った観察眼によってキヨミのたくらみに気付いた。しかし、実際はキヨミが事務所に来た段階で何となく怪しさを感じていたらしい。榎根を説得する場面ではココナッツを加工するための包丁を持っている榎根に全く臆さず、説得。最後に刺身を作ってこれをうまいというやつに心底悪い奴はいないと榎根を励ました。

 

それでは皆さん。ごきげんよう